「女子が剣術など、もっての他だ!」
「…っ」
千歳は反論出来なかった。
勇の言う通りだったからだ。
女子は15、6になればどこかに嫁ぎ子を産む。
これがこの時代の摂理だった。
「私…」
「いいんじゃないですか、近藤さん」
襖からひょこっと総司が顔を出していた。
「しかしなぁ…」
「…じゃあこうしたらどうです?誰かと手合わせして素質が見られるようだった
ら教えてあげる…とか」
意地悪気な笑みを浮かべ総司はちらっと千歳を見た。
「ちょっ、勝手な事言わないで!全く経験がないから稽古したいって言ってるのに
」
「それも出来ないなら稽古なんて出来ないよ」
「……」
千歳は言葉に詰まった。
総司の言う通りだったからだ。
稽古はそんなに甘くない。けれど今の自分では絶対に勝てやしないし素質なんて
ある気もしない。
「うむ。総司の言う通りだ。一回誰かと手合わせさせよう」
勇は千歳の思っている事とは裏腹な決心をした。