賭けの対象

TV電話でキャゼルヌから連絡があったのはアスターテ会戦の数日前の事だった。
キャゼルヌの顔色はあまりよくない。ヤンはいい予感はするわけもなく、何を言われても拒否しようと決めてしまった。

「まずい、袋という袋が空っぽなんだ。」
「身軽で楽ですね。」
「あぁ身も心も身軽だ。」

ヤンはキャゼルヌが話し出すので拒否するタイミングを見失った。
どうやら賭けに負けて本当に袋という袋が空らしい。どんな賭けか興味が湧いたが、少し怖い気もした。

「『三月兎亭』にいるから来てくれないか」

これは頼みではなく命令に聞こえたのは気のせいだろうか。
ヤンはこれで放置してはどうなのだろうかと考えたあと立ち上がった。
 

ヤンが見た光景はあまり良いものではなかった。
足をテーブルに投げ出し、長い髪を無造作に流した人物がキャゼルヌに冷たい目を向けていたのだ。

「賭けに誘ったのはあんただ。」
「もう無理だって何度言えばわかる!いい加減にしてくれ!」

ヤンは客に対する迷惑行為と自覚しているのだろうかと首をかしげた。
自覚はしていないだろうな。
自分も同類にはされたくないが、ここまで来て見捨てるわけにはいかないようだ。

「店の迷惑になってますけど?」
「あ?」
「ヤン、遅いぞ」

これでも早めに来たのだが、と言いたかったがやめておいた。長引かせるだけだ。

「あんたは?」
「ヤン・ウェンリーとい・・・」

最後まで言い終わらせては貰えなかった。
「カレン・カーチャル。不本意ながら准将してる。」

ヤンはさっきの質問の意味を疑問に感じながら、話を聞かされた。
ヤンは受け流して聞いていた。
今日は厄日だ。
キャゼルヌはカーチャルと暫く話すと何か思い付いたらしく、カーチャルを納得させた。

「このヤンが誰と結婚するかを賭ける。それで俺が勝ったら渡す金は半額だ。」
「のった!負けたら倍だ。」
「・・・何を勝手に人を賭けの対象にしているんだい?」

ヤンにはこの二人をまとめる知恵はなかったようだ。
|
- 2//61 -
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -