長い演説

アスターテ会戦の慰霊祭に参加するヤンは演壇直下の最前列に座った。
横に座っている人物に気付き、名前を思い出そうとした。
カーチャルだ。
ヤンはあれからカーチャルについて聞く機会が多かった。
『女帝のカーチャル』と言われ、上司には喧嘩を売り、部下からは金を取ると言われている。一部からは上司が部下から金を巻き上げたものを、カーチャルが奪い返したという人物もいる。クビに出来ないのはカーチャルが優秀だからだ。
ヤンはカーチャルが寝ていることに気づいた。自分自身、これからトリューニヒトの演説があると思うと寝てしまいたい。
カーチャルが最前列にいる理由は、上が来ていることを確認したいのと、面倒ごとを最前列なら起こさないと考えられているのだ。
かたどおりの式が終わり、トリューニヒトの演説がはじまった。
それが煩かったのか、カーチャルは起きた。
ちょうどヤンはつぶやきを発したところだった。

「へぇー指揮がまずかったのか。」

二人は周囲から見られたが、周りはすぐに視線をそらした。
カーチャルは退屈そうな顔をしていた。
しばらくして演説が終わり、聴衆が座席からたちあがり拍手をした。
ヤンとカーチャルはすわったままだった。

「貴官、なぜ、起立せぬ!?」
「あの演説について考えてたから。」
「この国は自由の国です。」

ヤンとカーチャルは顔を見合わせた。カーチャルはニヤリと笑いかけた。
わめこうとする准将にカーチャルはやる気のようだ。かなりよろしくない。
トリューニヒトがそれを制した。
彼女にはそれが不愉快だったのは言うまでもない。

「あれは・・・」

カーチャルは全然違うところに気をとられた。
若い女性が演壇に歩み寄っていたのだ。ヤンはその女性の容姿に記憶があった。
カーチャルはその女性の話を聞いて愉快になったのか、身を乗り出していた。喜怒哀楽の激しい人だ。
ヤンはカーチャルの手を引いてから、ジェシカのところまで行き、連れてきた。
カーチャルとジェシカを置いておく訳にはいかないヤンは感じたのだ。
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