言動の矛盾

女帝は私的理由で会いに行かねばならぬことに不快を覚える。
メルカッツ提督の亡命を聞かされたとき、飲んでいた珈琲をこぼし、お陰で太股に火傷を負った。
まさかあの歳のいったメルカッツが亡命とは人生は予想がつかない。
女帝は副官のシュナイダーは知らないが、メルカッツとは面識があった。

「メルカッツ提督、失礼いたします」
「貴官は確か・・・」
「カーチャル准将です。現在はヤン提督の護衛を務める身です。」
「ヤン提督の傍にいた女性だな」

カーチャルは覚えられていたことに驚いた。
初対面で女性と見抜かれることはほとんどない。
しかし、帝国にいたときの自分を知っているなら、見抜かれることもあるだろう。

「覚えておいででしたか。」
「あのときは工作員として優秀だと騒がれてましたからな。生きていらっしゃったとは・・・カーチャル准将、今日は何の用で?」
「お願いがあり参りました」

カーチャルは分厚くはないが、大層な封筒をメルカッツに差し出した。
メルカッツは封筒の中を軽く覗いて中身を把握した。

「これは貴官の帝国時代のデータではないか。」
「はい、出来ることなら預かって頂けますか。捨ててしまっても構わなかったのですが」
「同盟側に見られては厄介な代物でしょうな。」

メルカッツは女帝がデータを捨てられずにいる理由を理解できずにいた。
持っていてもお荷物でしかない。しかも必要のあるお荷物ではない。
女帝にとって帝国の古いデータは貴重であった。そう考えるのは昔からの癖であり、自分ではデータを捨てられずにいたのだ。
メルカッツがデータを捨てようが、保管しようが女帝にはどうでもよかった。
誰かがけじめをつける手伝いをしてくれさえすれば。

「それにしてもヤン提督をどう思う、カーチャル准将」
「・・・悩みごとを増やしてくれる厄介な上司です。国民には英雄と讃えられますがな」

カーチャルはその通りだと自らの台詞に頷いた。
処女神の首飾りを破壊したが、その事を上がよく思わず、何が起きるか考えるだけで腹が立つ。仕事が増えるからだ。

「中途半端なところが裏目に出なければよいですが」

中途半端な時点で裏目じゃないかと次は自らの台詞に否定した。
自分の矛盾した話が今後何を起こすか、カーチャル自身知らないでいる。
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