膨れた障害と生涯

カーチャルはヤンとユリアンを送る側に立った。
イゼルローンからハイネセンまでくっつき、護衛するわけにはいかない。
実際はプライベートの時間ぐらい必要と称し、カーチャルがサボるためだ。
マスコミが騒ぐ中で、暗殺をする方も勇者であり、帝国にラインハルトという天才がいる中で、暗殺する方も勇者である。
自ら沼に落ちたいのなら、ヤンの身は危ないものだが。
カーチャルには今回は無事に終わると確信していた。
そのためか、個人的な調べものにあたることができた。

「オーベルシュタインか・・・」

女帝にとって生涯における障害物の名前である。
しかも、あのラインハルトの下で参謀長をしているため、障害物はさらに大きくなっている。
カーチャルは、ふっとキルヒアイスの顔を思い浮かべた。
参謀長からしたら邪魔でしかないだろう。
キルヒアイスが優秀であるため、参謀長自ら動くわけには行かない。
なら自滅を待つのが普通であろう。キルヒアイスの性格から考えての結果である。
しかし、カーチャルには同盟側にいる限り、考えるべき問題がある。

「さて、イゼルローンをどうするかな」

カーチャルはクーデターの可能性を知りながら、なにもしないわけにはいかなかった。
自らのため、市民のため。そんなカッコいい話ではない。
あくまで自己満足な領域をでることはない。
カーチャルは軽く祈った。
「未来のヤン・ウェンリーがいませんように」と。
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