要塞の内部に
彼女はつまらなさそうに頬杖をつき、ため息をつく。
気づけば要塞をまるごと動かすという策が成功していた。四月十日のことである。
自分がいない間の変化に少々追い付いていない。
しかも背後にはオーベルシュタインとの納得のあかない関係がそびえたつ。
マーティルダは確実に自分が利用されていると考えていた。
ビッテンフェルトはオーベルシュタインが部下であるマーティルダの見舞いに行った話を聞いて悲鳴をあげた。
「ドライアイスが溶けたらただの空気だな」と。
ビッテンフェルトはマーティルダにオーベルシュタインが落ちていると考えていたからだ。実際、部下を見舞いに行くような人ではないわけだが。
マーティルダをからかおうとビッテンフェルトは訊ねたが、彼女の態度からその気は失せてしまった。

「お嬢ちゃん、大丈夫かい。」
「そこのおっさんより大丈夫。二十すぎをお嬢ちゃんとは呼ばないもの。」
「陰湿オーベルシュタインの部下をつとめるお嬢ちゃんがお似合いさ。」

ビッテンフェルトはお嬢ちゃんに喧嘩を仕掛ける気などないし、マーティルダもあまり気にはしなかった。

「それよりお嬢ちゃん、なにしてんだよ。酒でも飲むか」
「お嬢ちゃんに酒をすすめるやつとは飲みません」
「わかったわかった。で、どうした」

マーティルダはビッテンフェルトには話す気にはなれなかった。
ビッテンフェルトの人柄を知っていた訳ではないが、ややこしくなる気がしていたため仕方なく今回の戦いの話をした。
マーティルダは相談するならミッターマイヤーかメックリンガーかな、と笑ってみせた。

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