08.絶賛船酔い


慣れないと船酔いをするものだ。
クロノスは外に出てマルチェロに付き添っていた。
意外にもマルチェロが船酔いでダウンしている。
クロノスは心配してマルチェロの傍にいた。
ぶつぶつぶつぶつとマルチェロが何かを呟いて恐ろしい。
恐らく、自分は船酔いをする予定ではなかったのだろう。
法皇演説の前に船酔いはしなかったのだろうか。

「吐いたら楽になるぞ?」
「吐いてたまるか!!
愚弟に負けるぐらいなら首を吊る。」
「・・・・・・わ、私の意見は無視か。
マルチェロが首を吊るなんて、怖いな。」
「発言を取り消す。
吐く!!」

呆れたクロノスはしばらくマルチェロに背を向けた。
あられもない姿を見る気も見せる気も互いになかった。
ダウンしているマルチェロと呆れたクロノスのもとに、大きめな帽子をした青年がやって来た。
旅人だろう。長いマントをしている。二人からしたら、邪魔くさいだけだ。

「お二人が羅針盤を持ってきた方ですか?」
「まあ、仲間の一人と言うべきだな。
ってマルチェロ、なんで警戒心むき出しなんだ!!
大人しくしていてくれ」
「いや、敵か味方かわからん輩に、警戒心を解くわけにはいかん」
「ふぅ・・・・・・やはりそう来ますか。
私の名前はクロウズ。しがない旅人です」
「あ、マルチェロに同意する。
こういうのは、しがなくない旅人なんだ。
勘がそうささやく」

とりあえずクロウズは困った。
二人から謎めいた警戒心をむき出しにされたのだから。
仕方がなく本題を切り出してしまう。

「羅針盤が盗まれたのですが、心当たりはありませんか?」
「疑われている?羅針盤を盗む意味など私たちにはないんだが」
「魔法の羅針盤を盗むとは大した度胸だ。
レンダーシアに着かんのは問題だな。
船酔いなどそれに比べたら、相手にもならん」

それだけはあり得ない、とマルチェロに呟いてしまいたい。
クロノスは大人になり黙って見ていた。
その目があんまりに暗すぎることに気づいたクロウズは、ちょっとマルチェロに同情してみせた。
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