06.父と娘


血。赤。吐き気。
気持ちがいいものではない。むしろ気持ち悪い。
ユウコは思い出してしゃがみ込んだ。
払った対価に見合うだけのことをしなければならない。耐えることもまた一つ。
人の心に入ってはならない。飲まれてしまうから。
ここでそれが通じるかはともかく。

「来たんですか。」

侵入者にそう告げた。白と黒の心の世界。
この世界でなら、ユノを頼れば入れる。新職占い師なら。
父であるはずの人に敬語なんて不気味な話だ。

「さっさと帰るぞ。愚弟が騒ぐ前に」
「聞かないんですか。私の家出の理由を」
「ふん。滝なんぞに打たれたところで先に進むか。
貴様が私の娘ということぐらい気づいている。」

驚いたユウコは、冷静になって考えた。
胸に掛けていた指輪を取り出して気づく。
眠りについたときに、したままだった。見られたのだろう。
自分の管理ミスだ、と内心舌打ちをした。
マルチェロが手をのばす。柄に合わない。

「……私、やっぱり行きたくない。」
「……」
「未来を知ることになる人の運命を、変えたくない。
これから先、起こるか知る者がいれば、周りは良くも悪くの左右されてしまう。
ククールが死ぬの見たくない」

ククールの死。
どれだけあれが嫌いでも、ククールの死には興味があったマルチェロ。
まだ借りも返し切れていない。死なれて困る。

「だから逃げるか?」
「だって」
「未来で死んだ君の両親は、言い訳をしろとおしえたか?
そんな暇があるなら、ない頭で改善策でも考えんか。
逃げられんところまで、すでに来ている。わかるだろう。
まだ何を隠しているかは知らんが、その多量な魔力を使わんか馬鹿たれ!!」
「え、あ、はい!?」

そうか、隠していた魔力か。ユウコは思い出した。
育った世界に魔法がなかったから、隠すのが癖になっていた。
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