17.猫がさらなる猫を 1/2

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自分の利益のためというより、他者のためなら頭も下げれるものだ。
ライハルト・フォン・ミューゼルのローエングラム伯爵家の授与式。正確な言い方が分からなかったが、これでも十分に正確だろう。ビッテンフェルトが見に行きたいと騒いだ。貴族以外が参加は許されない。正確にはラインハルトを遠目で良いので眺めたいというものらしい。ストーカーだな、と毒づいた。
帰宅されるローエングラム公に素直に祝いの言葉をかければよいのだ。もっともそうなるであろうことは目に見ていた。
カサンドラは貴族にもローエングラム公にも興味がなかった。自分にとって身近ではないものに感心を示したどころで無駄な動力であると信じていた。ビッテンフェルトのことはこの際放っておいて、自分は好きに歩き回るとしよう。
日本にいた時は歴史に感心はなかった。しかし、この世界に来て、もっとも多く読んでいた書物は歴史書であった。理由は文の言い回しが面白かったからで、歴史の中身ではなかった。しかし、歴史を抜きにして読むと記憶には残るもので、今も「この建物は確か・・・」と反芻している。
建物に関心を示した彼女は人とぶつかってしまった。謝ろうと、その方の見て血の気が引いた。
オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク。フリードリヒ4世の即位時にその後ろ盾となり、彼自身皇帝の娘を妻に娶るなど外戚として絶大な権勢を振っている。
飼い主以外に牙をむく彼女ではあったが、飼い主を守るためなら別の選択も出来た。
カサンドラは大げさなぐらいに頭を下げた。

「まことに申し訳ありません。お怪我はありませんでしょうか」
「この程度で怪我をしたりはせん」
「しかし、一市民ごときが、かの有名なブラウンシュヴァイク公爵を拝見出来る日が来ようとは思ってもいませんでした。本日はライハルト・フォン・ミューゼルがローエングラム伯爵家を・・・・・・」
「ほぅ、そなたは賢いな。そうだ今日はあの忌々しい子供ごときのために」

何が賢いか。話を逸らされたことに気づかなかった貴様に褒められたくもない。とは口にしなかった。

「しかし、血筋はブラウンシュヴァイク公爵をお味方しておられる。」
「さよう。平民でもそなたのような博識のあるものと出会いたいものだ」

何が博識だ。こちらは味方なさいますなんて一言も言っていないぞ。とは口にしなかった。
ブラウンシュヴァイク公が去ったことを確認し、その場を急いで後にしようとした。そこでやっと見られていたことに気づいた。ラインハルトとキルヒアイス、ビッテンフェルトだった。なんと、タイミングが悪いではないか。
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