16.風評は当てにならない 2/2

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「でさ、うちの上官の腹筋はシックスパックなの?見かけ倒しの体格なんて嫌よ」

聞いていなかったカサンドラはトマトソースを軍服に落として慌てていた。筋肉フェチではないのでわざわざ見たりしない。まず、女子高にいたせいか、男性に対する苦手意識が未だに拭えずにいる。思春期を女子でまみれた生活にするものではないらしい、と今になって反省している。とりあえず、しゃべり続けるエラを無視し、ソースを拭く。
確かにビッテンフェルトが床で寝て、腹を出してる際に触ってみようと好奇心で思ったことがある。しかし、起きた時になんて言われるか。考えると困ることが多かったのでやめてしまった。今思えばもったいなかった気がしないでもない。
この光景を遠くから眺めていたビッテンフェルトは、カサンドラに友人が出来たことに喜んでいた。どうやら、そのあたりは親目線らしい。経緯はどうであれ友人が出来たことは良いことだ。少々二人の温度差が激しいが。
オイゲンはビッテンフェルトに顔を向けた。

「そういえば、ラインハルト大将がローエングラム伯爵家を継ぐことをご存じですか」
「当然だろう、あのお方ならそれぐらいはやってもらわんとな。顔だけ飛びぬけて綺麗なだけなら、家で戦争ごっこしてもらった方が良い。誰も死なないしな」

ラインハルトが元帥に昇進するのもそう遠くはない。それどころか貴族の馬鹿どもが、失脚されるためにさらに有利になる機会を与えてしまうだろう。元帥府にはこのビッテンフェルトをいれていただきたいものだ、と口に出すのはやめておいた。カサンドラが聞いていればいじってくるに違いない。それは面倒だ。

「俺はあの方の下ならやっていきたいものだ。いくらか楽しめそうだからな。しかし、そうなると、暇がなくなるな」

この人は戦場にいることが似合う人なのだ、しかも本人も分かっている。そんな人が暇だなど、嫌な予感しか沸かない。何かやらかすつもりではないだろうか。死を直前にしているのでないかという不安を抱かせないところが、ビッテンフェルトの変わったところである。
ビッテンフェルトはオイゲンの心配を無視して話しだした。その内容にオイゲンは珈琲を吹いた。

「なんておっしゃいました!?」
「だから告白しようと」
「はぁ・・・フラれることを考えておいでで?」
「考えたが、何もしないのは性に合わないとは思わないか」

確かに、ビッテンフェルトは恋愛に対して猪突猛進とはいかないようだ。もしそうなら、すでに行動を起こしていただろう。結果はどうなるにしろ、足踏みはしていなかったはずだ。
さて、どうなるだろうか。これは傍観趣味のフェルナーでなくても、誰でも気になるものだ。普通に考えれば望みはない。性格のぶつかり合い、皮肉の応酬、意見のドッジボール。まず、カサンドラは友人にはしたいが、恋人にしたくない典型の性格である。
そして、彼女はビッテンフェルトを受け入れるだけの器を持ち合わせているのだろうか。
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