愛しい師匠 | ナノ


▼ 11.冷蔵庫の牛乳

冷蔵庫を開ける。
牛乳。牛乳。牛乳・・・・・・「願えば伸びる牛乳」!?
歌川は冷蔵庫を開けたまま、ソファーに転がる菊地原を見た。犯人はこいつだ。髪が伸びた宇佐美は気にせず何かいじっていた。
最近、風間が持ち込んでいる牛乳がやけに増えたと感じていたが、半分は菊地原が持ち込んだものらしい。紙パックの牛乳を、「まずい」と言いながら飲んでいる菊地原がいた。
なら飲まなければいいのだが。
身長を気にし始めた菊地原。何故なのかは予想がつく歌川だが、気づいていない風間は聞く。

「この牛乳はなんだ」
「ぼくが飲んでるんですけど、くさいしまずい。
風間さん、よく飲めますね」
「なら飲まなければいいだろう。
わざわざ飲む必要があるのか?」
「・・・・・・別にいいじゃないですか」

そう言いながら菊地原は、紙パックの牛乳を飲み始めた。呆れるしかないぐらい言わない菊地原。
次はにぼしを取り出した。ちょっと歳を疑いたくなる。食べているところに、如月が作戦室に入ってきた。
ゆっくり違和感なく菊地原は、紙パックの牛乳を隠そうとする。違和感なくやればやるほど、違和感があるものだ。

「にぼしに牛乳!?
てめー、ジジイか」
「家にあったから食べてるだけですけど?
世の中のにぼし食べてる人に失礼」
「歌川、あんたにぼしを食うか?」
「え、まぁ食べますよ」

歌川は菊地原を守ってみた。
しかし、疑いの眼差しをする如月がいる。信じる気はないらしい。
会議に出席することを思い出した風間は、作戦室をあとにする。残された四人は会話を始めた。

「にぼし、牛乳・・・・・・
菊地原、好きなやつでもできたか?」
「・・・・・・別に関係ないじゃないですか」

宇佐美も気づいた。
この会話を中断させなければ、菊地原の心を如月はえぐり続けると。
しかも立ち直り不能になるまで。
作業を中断して会話に入る宇佐美。菊地原もソファーに転がることをやめ、如月に席を開ける。
戦闘体勢に入る三人に、気づいていない如月。

「男か?女か?」
「え、如月さん。男って選択肢あるんですか?」
「うってぃー思春期では珍しくないことだよ。
それにどっちも恋だからね〜」
「え〜じゃあぼくが歌川と付き合うみたいな?
気持ち悪」

冷たい目で見つめられた歌川は、「こちらが払い下げだ」と呟いた。
絶対菊地原には聞こえていただろう。
わがままな傲慢と付き合っていたら、精神力を鍛える修行にしかなりそうにない。
まあ如月が傲慢じゃないというのか、と言われたら分からない。

「年上か?年下か?」
「だから関係ないじゃん」
「年上か・・・・・・」
「・・・・・・!?」

何故わかったのか、歌川は驚いた。
如月が菊地原の眼を見続けていた。眼は嘘をつけない。「年上」、「年下」の単語を言う際に、菊地原の眼を見ていたのだ。
しかし、もう見るのをやめた如月。さすがに菊地原の好きな人など、知ることに興味はなかったらしい。

「日本の男は浮気しやすいからな。
せいぜい頑張んな。」

如月は飽きたらしく作戦室から出ていってしまう。
その時に菊地原は如月の呟きを聞いた。

「憧れと恋、見誤るなよ」
prev / next

[ back ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -