愛しい師匠 | ナノ


▼ 09.中学生の体育大会

体育大会までの一週間、菊地原の機嫌は悪かった。
如月が体育大会に顔を出す、という面倒事をいかにしてうまく対処するか。
年頃としては如月の片想いを突っ込みだがるはずなのだが、そんな面倒なことを菊地原はしない。
体育大会に来ると知らされた歌川は、あまり気にしてはいなかった。菊地原が怠けずに体育大会を頑張るか、を見に来ると推測していた。ならば歌川は問題なかった。
四種目出るのはクラスでただ一人、歌川だけだった。やる気がなかった人が多数いたわけではなく、平等に種目数を合わせたところ、一人だけ多くやるはめになった。
仕方がなく歌川が最悪の長距離走に手をあげる。優しい奴だと言われたが、菊地原が横から手をあげさせただけだった。
その本人の種目といえば障害物競争が難関ぐらいか。小麦粉で顔を白くする定番がないのが、菊地原が選んだ最大の理由らしい。
では何が問題なのか。
ぐるぐるバットがうまくできないようで、校庭の隅で回っている菊地原を見つけてしまった歌川がいた。

体育大会当日。
学校まで体操着という過酷な日。
菊地原は最寄りの駅まで来て、大事な忘れ物に気づいた。鞄が軽い。見てみるとお弁当がなかった。
今から引き返すのは面倒だった菊地原は、仕方がなくこのまま学校に向かう。弁当は歌川からもらおう、と勝手なことを決めながら。
電車に乗ると佐鳥に出くわした。
元気よく話しかけてきた佐鳥は、菊地原の鞄がやけに軽そうなことに気づく。何を忘れたのか大方予想がついたが、あえて言わないであげた。
学校についた菊地原は、歌川に弁当を忘れた話をした。

「今、先生に言ってなんか買ってこい。
絶対にお腹空かせるぞ」
「やだ、お金使いたくない。」
「・・・・・・卵焼きぐらいなら」
「やだ、唐揚げがいい」

そうこうしているうちに、集合がかかってしまった。
午前中に長距離があるのが救いだ、と歌川は思いつつ、菊地原の昼の心配をした。
やる気はないから保健室でサボりもするだろうが、如月が来るとなれば話は別だ。
真面目にやらないと、菊地原の訓練メニューが嫌というほど悪化するだろう。
風間は菊地原の訓練を如月に任せているところがありすぎる。
少しは菊地原に気を使ってあげてほしいものだ。
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