俺の彼女、電波です。


*3Z八土。


俺の恋人兼教え子は、なんというか変わった子だ。
名前は土方十四郎。
整った顔立ちの上、真面目で優しく万能だからとにかく女子にモテるし、先生ウケだっていい。
そんな完璧無双な土方は色んな意味で浮いていた。
主に謎すぎる行動のせいで。


「土方君、これなあに?」
例えば、だ。
受験間近の試験にふざけた絵を描いて、あまつさえそれをそのまま提出するなんて普通なら考えられないだろう。
だが、土方の試験用紙には。
モジャモジャとした頭の男が(しかも色ペンで描いてやがる)何故かウェディングドレスを着たマヨネーズをお姫様抱っこしているという理解不能な謎の絵が。
さらにその下には、
[先生俺アセロラ嫌いなんだ]
と謎のメッセージ付き。
「試験用紙には絵を描いてはいけません!」
「だって先生、総悟がさ、この前俺にアセロラのジュース買ってきてさ、そんで俺・・・」
「そっちじゃない!!絵の方!!」
試験用紙を叩きつければ、土方は思い出したようにヘラリと笑った。
「えへ。そのモジャモジャのが先生で、抱っこされてんのが俺なの。んで、それ結婚式なの」
「くっ・・・」
不覚にも萌えたじゃねぇかぁぁぁぁ!!!


思えば俺達が付き合い始めたのは土方からの告白からだったっけ。始業式の日に、突然窓から飛び降りたり(本人曰く、鳥を捕まえたかったから)体育祭ではレーンを一人逆走したり(本人曰く、そうすることによって宇宙を統括する神々との通信を可能にするらしい)とにかくキテレツで電波な奴ではあったが、告白するときの顔は真剣そのものだった。
「俺、馬鹿だけど。でもね、ずっと見てくれてた先生の事好きだって思ったの」
何故俺がテストの採点をしながら、無人の教室でカップ麺を食ってる時に土方が告白しようとしたのかは今でも分からないが。
珍しくも照れたようにはにかみながら、土方は意を決したように思いを告げてくれた。
「先生、俺の事彼女にしてください」
それが、始まり。
何故俺はあの時断らなかったのだろう。
別に女も男も両方イケるというわけではないというのに。
ただ、あの日の土方があまりにも可愛かったから。
思わずオーケーしちゃったんだろうな。


「先生、今日は一緒に帰れる?」
「あー・・・今日は無理」
「どして?俺は先生と帰りたいのにぃ・・・」
甘えた声で来られると正直困る。特に学校では付き合ってる事を彷彿とさせるような発言は控えてほしい。
・・・まあ、言っても無駄だろうけど。
現にうちのクラスの連中は、ほとんどが俺達の仲を知っているらしい。
「こ、困ったな・・・」
「先生この前俺の家で好きって言ってくれたじゃん・・・土方君の生まれたままの姿が見たいぜあはーんとか言いながら服も脱がしてきたのに、」
「だぁぁぁぁ!学校で言わないで!お願いします!あ、結野先生そんな顔で見ないでぇぇ!」
・・・早くも空気読めない彼女のせいで俺の教師生活に終止符を打たれるところだった。
「・・・分かった。仕事さっさと済ませてくるから暫く待ってて・・・」
「やったぁ!!」
万歳するまでに喜んでくれて彼氏冥利につきますよ・・・。
肩を落として職員室に向かう俺に土方の明るい声がとんだ。
「先生、大好き!」
・・・周りの冷めた視線がいやに俺に刺さった。


「あれ?土方さん、先生と帰るんじゃないんですかぃ?」
「うんだぜ!待っててって言ってくれたんだ!」
「どうせ得意の泣き落としと空気読まないフリで先生困らせてきたんでしょう・・・あんたって、とんだ策士ですよね・・・。自分のキャラを理解した上で利用してるんだから」
「えー、なんのこと?」
ニヤリと不敵に笑いながら土方は沖田に背を向けて走り出す。
「あんたみたいなのは電波じゃなくて小悪魔って言うんでさぁ」
沖田は呟いて反対方向に歩き出す。
銀八が踊らされているという事実に気付くのはいつになることだろう。

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