真夜中の決闘

何でもいいから実力で勝負しろと、以前そうドラコに教えを説いたのは確かに私だ。が、それをよろしい。ならばこれは決闘だ!という話になったのは何故だ。一体どこのアーチボルト家の当主さんですか。確かに決闘は魔法族の伝統やらではあるけどさぁ。



『私は面倒だから行かないけどまぁ頑張ってね』

「そうはいかない。君を介添人に選んだからな」

『何…だと……!!?』



油断してたぜ。本人の許可無くきっちり巻き込んでくれるとは!しかも事後報告とは何事だ。こんな事ならさっきドラコがハリー達にちょっかいを掛けに行こうとしてた時点で止めておけば良かったよ畜生。



『決闘とか止めておきなよ。しかも真夜中にって…』

「フン、僕が奴等程度を相手に遅れを取るとでも?」



あの名台詞、オジギヲスルノダ!を思い出して腹筋クルーシオになるからだよ!!2ちゃんのAAネタが懐かしい。

え、ていうか……ドラコさん、貴方本気で決闘に行く気なの?セブにチクってハリー達を嵌めるんじゃなくて?

ドラコ曰く、そうしてやろうとも考えたが、ハリー達があまりにも生意気な為、一度力の差を思い知らしてやらないと気が済まなくなったらしい。このまま引き下がる訳にはいかない。蛇寮生としての誇りが、純血貴族としてのプライドが許さない、との事で。ああ、やっぱりそう簡単にはドラコも大人になれないよね。まだまだ子どもなんだから当たり前だけど。




『フィルチ辺りに見付かって罰則オチになると思うのデスが…』

「リクが何と言おうと、今回ばかりは僕も譲れないからな」



今回ばかりはって……一体何を言われたんだドラコよ。…否、正確にはドラコの方がちょっかいを掛けに行って逆に言い負かされて来た可能性の方が高いんだけども。まぁ、日頃からあれだけ悪口で貶められ返されたら箱入り坊っちゃんなドラコがプッツンするのも無理はないか。…ぶっちゃけ、ドラコとロナルドは喧嘩両成敗だと思う。そしてハリーは性格上自分からドラコにちょっかいは出さない代わりに、売られた喧嘩は買うって感じか。

ハリーとの決闘に闘志を燃やすドラコを尻目に、これはどうしたものかと思わず少し考え込んでしまう。下手に断ればドラコの機嫌は急降下してしまうだろうし、そうなると後々面倒だしなぁ……とか考えていたらタイムオーバーを迎えてしまい、結局仕方なく深夜ドラコに引き摺られて決闘場所に指定したというトロフィー室の前まで来た。が、



『ドラコが強いのは知ってるからさ。寛大な心を持ってして許してあげても良いんじゃないかな…』

「またリクはそうやってポッターを庇うのか!やっぱりリクも…」

『!…シレンシオッ!』



咄嗟にドラコを強制的に黙らせ、物陰に身を隠した直後。何者かの足音が聞こえてきた。



「確かに此方から話し声が聞こえた気がしたが…」



野生の フィルチ が現れた。

ほらね、言ったでしょ?という意味を込めてドラコの方を見やれば、元から青白い顔色が更に蒼白になっていた。どうやらそれ所じゃないらしい。なんたって、退学の危機だもんねー。とは言え、フィルチにそんな権限は無いし、ましてやセブが私やドラコに対してそこまで処罰を下すとは思えないんだけど。



「(で、どうするんだ?)」

『(勿論逃げるに決まってるでしょ)』



半分面白がってるヴォルに対し、リクは特に慌てる事なく、いつもの調子で返しながら思考する。姿眩まし…は、流石にドラコの前でするのは不味い。このまま上手くやり過ごせないかな……と思っていたのに。



ガシャンッ

「!誰だ……っぅお!?目が、目がぁあああ!?」



ドラコが足元にあった何かを倒したらしく、盛大に音を立ててしまった。仕方なく咄嗟に必殺バルスをフィルチに食らわし(ルーモスをフィルチの目に向けて目眩ましさせただけ)、隙を突いてドラコの腕を引っ張り、双子直伝秘密の逃走通路を駆使してフィルチを撒きながら逃げてる途中でハリー達と遭遇。何この展開。



「リク!?」

『やぁハリー。こんな所で会うとは奇遇だね』

「フン。奇遇も何も、どうせそいつらは臆病風にでも吹かれて、逃げ出した所だったんだろうさ」

「そっちこそ、確か決闘の場所はトロフィー室前だった筈だけど?」

『ああもう!どっちも同じ様な理由で走ってる癖に、ドラコもロナルドもこんな時に迄いちいち喧嘩しないの』



ハーマイオニー曰く、トロフィー室に向かう途中でピーブスと出会したらしい。そこでピーブスに大声を出されてしまった為、慌てて逃走するハメになったんだとか。互いに踏んだり蹴ったりである。

そんなこんなで、ハリー達と一緒に並走しながら夜中の校内を闇雲に走る走る。これだけパニくってたらこっそり姿眩ましするか透明になって飛んで逃げても気付かれなさそうだな……あ、無理だ。ドラコにしっかりと手を握られてたわ。とか考えてたら、何時の間にやらハー子が「アロホモラ!」って唱えて鍵を開けて何処かの部屋の中に皆で飛び込んだ。…あれ?この展開って詰んだんじゃね?と気付いて、近くで固まっているネビルにならって背後に振り返り、三頭犬と御対面。牙剥き出しで可愛くぬぇえええ!!!

その後、ハリー達も遅れ馳せながらも三頭犬の存在に気付き、再び逃走劇が幕を開けた。しつこい様だが、現在もドラコは私の手を掴んだまま逃走中である。ハリー達とは先程調度別れたし。…うん。私、よく頑張って走ったよね。だから、もうゴールしても良いよね?という事で、そのまま蛇寮の前まで一緒に姿現しをした。ドラコが一瞬アレ?って首を傾げてたので、私も同じ様に首を傾げて互いに顔を見合わせたら、まぁ良いか。という結論に至ったという。ホグワーツの七不思議とでも思っておいとくれ。



「な、何なんだあの犬は!?馬鹿でかいし頭が三つもあったぞ!?」

『さながらアレはキングギドラだね』

「どう見てもあれはドラゴンじゃないだろ」



校内にあんな危険生物を飼うなんて非常識だ!父上に言い付けてやる!と絶賛憤慨中のドラコを、リクは内心焦りながらも、最終的には何とか宥める事に成功した。ドラコの様子を見る限り、彼はフラッフィーの足下にあった扉の存在には気づかなかった様だ。あれだけ犬のインパクトが強いと無理もない。初見な私も扉の存在を確認する余裕は無かったし。最悪の展開を想定して、攻撃してこようモノならいつでもドラコ達を守れる様にフラッフィー迎撃態勢を取ってたからね。音楽や歌で眠らせるって選択肢は、咄嗟の場では残念ながら浮かびませんでした。



「(しかし、本当にあの犬は一体何だったんだ…?)」

『(ハグリッドかダンブルドア辺りのペットじゃないの?もしくはホグワーツの守護神とか)』

「(強ち否定出来ない所が何とも言えないな…)」



何はともあれ、無事に寮まで辿り着き、無事に罰則も回避出来た私達ってスゴいね。走り過ぎて若干死にそうだったけど。タイトルを真夜中の決闘ではなく、真夜中の逃走に変える巾だ。

 

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