ホグワーツ特急
『……っていう事があったんだ』
「第二のフレッドとジョージがいる…!!いや、下手したら君ってあの二人以上じゃないか?」
『おだてても何も出ないよロンロン……じゃなくてロニー坊や』
「どっちの呼び方も止めて欲しいんだけど」
ホグワーツ探検隊の武勇伝を語ったら、ロンの表情が引き吊った。正確には、ロンの名前の呼び方の方に問題があったんだけどね。
現在、私とハリーとロンは同じコンパートメントにてお互いの事を語り合い中です。
「でも、本当にどうやってホグワーツに行ったの?あそこは姿現しもフルーパウダーも使えない筈じゃ…」
『私も今思うとかなり不思議なんだけど……でもほら、子どもの頃って自分じゃ魔力を制御出来ないと不思議な現象を起こすじゃん』
「どんだけ強い魔力を持ってるのさ!!?」
明らかに子どもの悪戯レベルの諸行じゃないと、ロンはツッコミたいらしい。そりゃそうか。だって大人の魔法使いにだって通常は不可能な諸行だし。お菓子をほお張りながら、リクは一人ごちる。女子力が低い?良いじゃないかまだ子どもだもん。
その時、リク達がいるコンパートメントの扉がノックされ、丸顔の男の子が泣きべそをかいて入ってきた。あ、もしかしてこの少年は…
「ごめんね。僕のヒキガエルを見かけなかった?」
ネビルキタ―――!!
ハリーとロンに首を横に振られると、少年はメソメソ泣き出した。そういえば、駅のホームでネビルを見掛けた気がする。その時からヒキガエルが逃げたって泣いてたから……下手したら駅のホームに置いてきた可能性が高いのでは?とも思ったが、後程トレバーはハグリッドに発見される筈なので、彼の余計な不安を煽るのは止めてあげた。可哀想だしね。
『…君、そんなに心配しなくても大丈夫だよ』
「え…?」
完全にしょげかえってコンパートメントから出て行こうとしたネビル少年を呼び止めると、不思議そうな顔をして此方に振り返った。
『いなくなったヒキガエル、君の友達なんでしょ?』
「う、うん。トレバーは、僕の大事な友達で…僕の家族だよ」
『なら、大丈夫。君がその子を大切にしているなら、その子はちゃんと家族の所に帰って来るよ』
ニッ、と笑い掛けてあげると、ネビルはちょっと頬を赤くしながら「あ、ありがとう…」と言って、コンパートメントから去って行った。ふむ、どうやらこのリリー似の容姿での微笑みの効果は地味にあるらしい。ひそかにハリーとロンまで何やらポカーンとした顔をしている位だし。全くもって失礼な奴等だな。
「(…珍しいな。お前が見ず知らずの他人にあんな言葉を掛けるのは)」
『(ショタって可愛いよね)』
「(俺の感心を返せ)」
いや、別に決してネビルを落とそうとか企んでる訳じゃないよ?別に逆ハーは目指してないし。ちょっとしたお人好しが発動しただけさ。そうヴォルに言ったら、見事にスルーされたけど。つれないなぁ。
それに、ネビルは全くの見ず知らずの他人って訳じゃないし。…まぁ、それは此方が一方的に知ってるだけなんだけど。
ハリー達の方を見ると、ロンがスキャバーズを見せながら、何やら杖を取り出していた。
「昨日、少しは面白くしてやろうと思って、黄色に変えようとしたんだ。呪文は効かなかったけど……やって見せようか」
いや、効かなかった呪文を他人に見せようとしてどうするのさ。今度は成功すると信じているのか。ロンを弄りたがる双子の気持ちがよく分かる気がするよ。
私とハリーが見守る中、ロンが杖を振り上げた途端、またしてもコンパートメントの戸が開いた。一人はネビルで、もう一人はホグワーツのローブに着替えた女の子……という事は、この子がハーマイオニーか!!!
「誰かヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの」
「見なかったって、さっきそう言ったよ」
「あら、魔法を掛けるの?それじゃ、見せて貰うわ」
言葉のキャッチボールが成立してないよこの未来の夫婦!!目の前に座り込んだハー子に、ロンは若干たじたじになりながらも、良いよ、と言って咳払いをした。
「お陽さま、雛菊、とろけたバタ〜。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ」
ロンは杖を振ったが、何も起こらなかった。そんなロンに私は問いたい。何故そんな明らかに嘘っぽ過ぎる呪文を信じたんだ。可愛いな流石ロニー坊や!
「その呪文、間違ってないの?」
『(ちなみに私はそのネズミ限定でネズミを人間に変えさせる事が出来るぜ!)』
「(いや、これ以上その子供に追い討ちを掛けてやるのは可哀想だろ)」
『(でもそうした場合、ハゲでデブで微妙な中年オヤジの姿で現れる事請け負いだからあまりオススメはしないけどね!)』
「(オススメしないどころの話ではないな)」
半分本気でやろうかとも思ったが、ヴォルの意見が正論なので止めておく事にした。私もこんな序盤から修羅場はごめんだぜ面倒くさい。
「まぁ、あんまりうまくいかなかったわね。私も練習のつもりで簡単な呪文を試してみたことがあるけど、皆上手くいったわ。私の家族に魔法族は誰もいないの。だから手紙を貰った時は驚いたし、勿論嬉しかったわ。だって、最高の魔法学校だって聞いてるもの……教科書は勿論全部暗記したわ。それだけで足りると良いんだけど……私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」
生ハー子の生の長台詞だー。すごいね、フォイフォイの時並に口を挟む余地が無かったよ。
それにしても、ハーマイオニーも勿体無いね。頭脳明晰だし顔も可愛いしネビルのヒキガエルを一緒に探してあげる位良い子なのに、言い方がキツいから絶対損してるよ。
『教科書を全部暗記するなんてすごいね。私はリク・スネイプだよ』
「僕、ロナルド・ウィーズリー」
「ハリー・ポッター」
その後は、ハリー・ポッターの名前に反応したハー子が再びマシンガントークを炸裂させていた。
ていうか、長旅は疲れるからホグワーツ新幹線とか出来ないのかな……あ、孫世代でもホグワーツ特急とかいう汽車だったから無理か。マグルな技術がちょいと懐かしい元現代っ子です。