解けない魔法

正直、私はあの時死んだと思った。ヴォルデモートにアバダケダブラれた時に。

しかし、なんと私はハリー同様死ななかった。しかも、まさか私までヴォルデモートのホークラックス(分霊箱)になるとは思わなかったよ。

あれか、魂が砕けた時に傍にいた生き物に付着した云々で、ハリーだけでなくもれなく私にも付着しちまったぜ☆とかいう理由か。なんて傍迷惑な…!隣の家が火事になって、もれなく我が家も全焼したよみたいな!!なんて…なんて傍迷惑な運命なんだっ!!!

お陰で分霊ヴォルの説得に1年という月日が費やされ、尊い犠牲となった。実は此れが私が一年間眠り続けていた理由といいますか原因です。とはいえ、存外楽しかったけどな!物凄い充実感も得られた訳だし。誰かとあんなにお互いの腹の中を割りに割って話し合ったのは生まれて初めてだったよ。ああ、勿論前世の生涯を含めての話ね。今では分霊ヴォルは私のよき理解者だ。ヲタク文化にはあまり肯定して貰えてなかったけど。厨二病とヲタク。微妙にも似て非なるこの2つ、ぶっちゃけどっちもどっちだと私は思うんだ。

分霊ヴォルは闇の帝王と名乗っていた自分は黒歴史だって語るけど、巷でも闇の歴史だって語られてるよね。同じ事を言ってる様に聞こえるのに、実際は意味が全然違ってくるからマジ笑える。



『逃げるなよ』



今から数年前。私がリク・ポッターとして生を受けて一年……いや、和解したあの時点では二年目か。私の精神世界で分霊ヴォルを一年掛けて説得を続けた結果、分霊ヴォルが自分の行いに対する自責の念やら良心の呵責に耐え切れずにとか、兎に角そんな理由から消えようとした所、リクは咄嗟に分霊ヴォルの手を掴み、彼が消滅しようとするのを引き止めた。

驚いて振り返った分霊ヴォル……言いにくいから愛称をヴォルにしよう……に、リクはニヤリと意味深な笑みを浮かべる。



「何故止める?」

『え、嘆くイケメンって何か不様でザマァwwって感じで面白いし』

「最低だなお前」

『お前が言うなよ』



ケラケラと笑いながらリクにツッコミを入れられ、それはそうなのだが…!と憤りを感じても、残念ながら否定は出来ない可哀想なヴォル。全ては黒歴史のせいだ。頭が痛い。どうやらリクは面白がって意図的にホークラックスを解かなかった模様。何この公開処刑?というのが、精神的に疲れきったヴォルの心境だったりする。



『まぁ、冗談はさておき』

「(本当に冗談だったのか…?)」



げっそりと、疲れたを通り越して最早やつれつつある様子のヴォル。可哀想に、誰のせいだよ。勿論私だ。



『せっかく和解出来たのに、このまま消えるなんて勿体無いじゃん』



すると、ヴォルが驚きに目を見開き、固まってしまった。ヴォルって何気に感情表現が豊かだよね。トム・リドルだった頃はポーカーフェイスが必要だっただろうけど、闇の帝王時代には必要なくなったからかな。



「そんな理由で…?俺はお前の両親を殺した仇なんだぞ」

『その件に関しては許せないけど、だったら尚更ヴォルはその責任を取る必要があるよね?』



じっとヴォルの返答を待っていると、彼は意外にあっさりと結論を出した。



「…良いだろう。その責任とやらを、俺は果たせば良いんだな」



して、お前は俺にどうして欲しい?そう問うてくるヴォルに、リクはニヤリと口角を上げた。



『取り敢えず、まずはアバダケタブラの正しい発動方法を教えて』

「今迄の和解の流れは何だったんだ」



物凄く矛盾してないか?してないよ。発動に失敗(正確には失敗すら出来てなかった)したのをずっと根に持ってただけなんで。

こうして、私とヴォルのこの先長い付き合いとなる腐れ縁は、改めて始まりを告げたのであった。さぁ、まずは仲良くなる所から始めようか。


―――――――――
解けない魔法。正しいタイトルは解かない魔法。

そしてヴォルの一人称が俺様じゃなくて俺なのは、本人曰く、俺様と称していた闇の帝王時代はいわゆる黒歴史だから、らしい。


 

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