Re Birthday

気付いたら赤ん坊になっていた。つまり転成したのかと、自分の事ながら、そう客観的に理解していたが…



「ハリーは貴方に似ているわね、ジェームズ」

「リクの方はリリーに似て美人だよ」

「フフ、この子達は将来どんな魔法使いになるのかしら」



その仮設には若干捕捉修正が加えられた。目の前にいるこの夫婦、見覚えがある上に名前にも聞き覚えがあり、直ぐに重大な事実に気付いた。私が転生したのは某魔法学園が舞台の某小説の世界、つまり、ただの輪廻転生ではなく、属に言う転生トリップだったのだ。

しかも、よりにもよって主人公の双子の妹というポジションらしい。結構好きな物語だったからよく覚えてるけど、主人公の双子の妹なんて、本来なら存在しない筈の人物です。何故ならハリーは唯一無二の生き残った男の子になる訳で……あれ?そうするとハリーは兎も角、私って下手するとヴォルに殺されるんじゃね?

死んで生まれ変わった傍からまた直ぐに殺されるとか、最悪過ぎるだろ。例え生き残ったとしても、後半の怒濤の死亡率を思い返すと、何だか自分も生き残れる気がしない。声に出して嘆きたくとも『ぶー』としか言わない未発達な赤子の発語機能。

それでも、優しい両親の愛情は心地好かった。本当に、あたたかかったから。其れ丈に、二人が殺されてしまう事が悔やまれた。

そして、運命の一夜がやってきた。このまま殺されてしまうのも癪なので、一か八か、赤子だと油断しているヴォルデモートに対して奇襲を掛けてやる事にした。が、



『あぶあえはうわ!』



言えなかった!普通にアバダケタブラ言えなかった!畜生、喃語でもいけそうな言葉の羅列と思った私がアホだった!苛立ち任せに意気込んだ自分が何か恥ずかしい!痛すぎる!!何だかヴォルデモートの視線すらも痛々しい気がしてきたよ!闇の帝王の恐怖より自分の痛さが勝った瞬間である。全然嬉しくねぇ。しかも失敗しすぎて呪いの跳ね返しもないとかな!いや、そもそも杖すら持ってない状態で魔法の掛けようがないという常識に気付くのが遅かった。

あーぁ、両親の仇も取れずに私は殺されるのか。仕方がない、此れから色々と大変だと思うけど、私の分も頑張って生きてくれハリー…いや、今はお兄ちゃんか。

最期まで私達を抱き抱えたまま、冷たくなっていく母の体温を感じながら、私達の目の前で緑色の閃光が弾けた。

 

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