聖獣の森(3/12)


「……仕方ねぇ。お前達もついて来い」

「え、よろしいんですか?」



まさか、ルークに了承されるとは…ましてや一緒に行く事を誘われるとは思っていなかったのだろう。イオンは目を輝かせたが、ティアはルークの意見に反対した。



「何を言ってるの!?イオン様とサク様を危険な場所にお連れするなんて!」



神託の盾に所属するティアからしてみれば、承服出来る話ではない。イオンは、ローレライ教団の導師……最高位にある人物。これ以上、彼を危険な目に合わせる訳にはいかない。……あ、私も導師だった。



「だったらこいつをどーすんだ。村に送ってったトコで、また一人でのこのこ森へ来るに決まってる」

「……はい、すみません。どうしても気になるんです。チーグルは我が教団の聖獣ですし」



申し訳なさそうに話すイオンを指し、ルークはほれ見ろ、とティアに言う。

う〜ん、此処で私がライガクイーンの事を話せば話は片付くんだろうけど……それじゃあ色々と都合が宜しくないからなぁ。



「それにこんな青白い顔で、今にもぶっ倒れそうな奴、ほっとく訳にもいかねーだろーが」

「!」



ルークの思いがけない言葉に、イオンは目を丸くし、ティア迄驚いた表情を浮かべていた。ティアが持つルークの印象は、世間知らずな我が儘坊っちゃん……といった感じだったのだろう。そんな傍若無人で横柄な態度しか取らないと思われていたルークが、まさか他人を気遣う様な一面も持ち合わせていようとは……といった心境だろうか。



「あ、有難う御座います!ルーク殿は優しい方なんですね!」



感激した様に腕を胸の前で組み、嬉々とした表情で己を見上げてくるイオンに、ルークは焦った様な表情になった。



「だ、誰が優しいんだ!あ、アホな事言ってないで大人しく付いて来ればいいんだよ!」

「はい!」

「あ。あと、お前が言ってたダアト式…とかいう術?は使うなよ。お前、それでぶっ倒れたんだろ。魔物と戦うのは此方でやる」

「守って下さるんですか。感激です!ルーク殿」

「ちっ、ちげーよ!足手まといだっつってんだよっ!大袈裟に騒ぐなっ!それと俺の事は呼び捨てで良いからなっ!行くぞ!」

「はい!ルーク!」



嬉しそうにルークのあとについて歩き出したイオン。ガキ大将とその子分に見えなくもない二人を見て、サクはプッと思わず笑ってしまった。

こうして見ると、二人共普通の少年のようだ。いや、実年齢的には二人共まだまだ子供なんだけども。



「本当に良いのかしら…」

『まぁ、良いんじゃない?イオンも楽しそうだし』

「サク様がそうおっしゃるなら…」



複雑な表情でイオンとルークを見詰めるティアに、サクは苦笑する。本当は民間の方を捲き込むのは良くないし、イオンにも危険が伴うから止める巾……なのだが、ティアにイオンを止める権限はない。そして、止めれる私は止める気がない。

彼等についていくしか、ティアに選択肢は残されていなかった。



『さて、私達も行きますか』

「はい」



彼等に続いて、サクとティアも歩き出した。



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