聖獣の森(4/12) 「んで?お前は誰なんだよ。昨日は見掛け無かったけど…」 「ルーク!導師サクに失礼よっ」 『まあまあ。では改めまして……ルーク様、御初御目に掛かります。私はサク。ローレライ教団の第二導師です』 チーグルの巣を目指す道すがら、ふと思い出した様子のルークに尋ねられた。ティアがルークに怒ってたけど、構わないとやんわり制してから、改めて自己紹介をした。 「導師って事は、イオンと同じなのか?」 『そうですね。とはいえ、私は第二導師になるのですが…』 「……あのさ、別に敬語はいらねーよ。名前もイオンの時みたいに呼び捨てで良いし。お前はイオンと違って、そっちが素なんだろ?」 一瞬、虚を突かれた顔になる。イオンとティアには普通に喋ってるじゃねーか、と何故かルークは少し面白くなさそうだ。う〜む、やっぱりさっきのは堅苦し過ぎたかな? 何にせよ、本来なら王族の方に対して敬語を使わないのもどうかと思うが……本人からOKが出たから良いか。 『そうですか?では、遠慮なく……よろしくね、ルーク』 「お、おう…(変わり身早っ!!)」 畏まった雰囲気を取り払い、へらっとゆるく笑い掛ければ、ルークにビビられた。何故だ。 「そういえば、サクは何故ここに?僕は貴女が行方不明だと聞いていましたが…」 『う〜ん、本当はイオン達に用があったんだけど……まぁ、ここじゃ何だから、後で森を出てから話すよ。行方不明の件も含めてね』 兼ねてからの疑問を口にしたイオンに対して、サクはニヤリと含みのある笑みを浮かべてみせた。まだ和平の使者の事情を知らないルークやティアに知られると微妙だし。 後々の展開を考えると、問題はないかもしれないけど。 「…ん?ちょっと待てよ。行方不明なのって、イオンの事じゃなくてお前の事だったのか?」 私の言葉に何かが引っ掛かったらしく、ルークが怪訝な顔になる。嗚呼、そういえばルークはヴァンから導師イオンが行方不明だ…とか何とか話を聞いてたんだっけ。 『あー…多分、私とイオンが行方不明だという件は別問題だよ。私の場合、教団の軟禁生活から脱走してるだけって事になってると思うし』 「軟禁…って(コイツも俺と同じ?)お前…」 「!気を付けて!!魔物が来るわ!!」 ティアがいち早く魔物の気配に気付き、ルークの言葉を遮りながら警戒して武器を構えた。遅れてルークも剣を抜き、イオンを背に剣を構えた。 程無くして、草むらの茂みから魔物……アックスビークとライニネールが数匹飛び出して来た。 「イオン様とサク様は私達の後ろに!」 『二人共、気を付けて!ちょっと数が多いから』 「へっ、雑魚ばっかだから心配いらねーって!」 ティアが詠唱を始める一方で、ルークが率先して魔物に斬りかかっていく。…さて、私はどうしょうかな。まだ戦い慣れていないルークにはちょっと数が多そうだし、ここは後方支援に回った方が良いかもしれない。 「サク、二人のサポートをお願いします!」 『うん。そのつもりだよ』 イオンを背に、サクは音叉を構えながら周りの音素を感じ取る。ちょっとだけ魔物の動きを止める位なら……普通の譜術で良いよね。 『……ターピュランス!』 狙いを定めた複数のライニネール達の足許に譜陣が展開され、瞬時に譜術が発動する。竜巻が発生し、風に巻き込まれた魔物達が一瞬で音素へと還った。 「なっ、今のは術は…!?」 「ルーク!戦闘中は不用意に敵から目を逸らさないで!!」 「チッ、分かってるよ!」 ティアから忠告を受けたルークが、慌てて残った魔物に斬りかかった。魔物の数が半数減った事により、程無くして戦闘は終わった。 *前 | 戻 | 次#
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