最愛を捧ぐ(1/6)

瘴気の問題が解決した今、次に取り掛かるのはプラネットストームの供給停止だ。現在ルーク達は、瘴気中和作戦が成功した事を、各国へ報告しに回っている。調査の結果、瘴気は無事に中和出来たらしい。一件落着である。正直、もう一つ気になる事はあるけど……諸事情により、今はちょっと保留かな。

…私?ベルケンドからダアトに帰って来て、作戦成功をイオン達に報告して、お留守番こと療養中ですけど何か?

帰って来た時は、それはもう色々大変だった。お偉いさん方からもお説教を受けるし、モースなんかは血涙を流してたなぁ。極め付けが、イオンとクロノのあの笑顔が…ね……うぅっ、思い出しただけで胃が…ッ。イオンの部屋で、シンクと一緒に正座をさせられ、二人から超絶笑顔で猛毒を吐k…一番キツ〜いお説教を受けた。彼等の笑顔の裏に般若が見えたのは、見間違いじゃないだろう…。逃げたくても扉の前に腕を組んで立つアッシュに退路を断たれ、アリエッタにはすごく心配したと泣き付かれて……って言うか、クロノがキレてた一番の理由って、もしかしてアリエッタを泣かせたせい…?

そんな事を考えてしまい、遠い目をしていたら、部屋の扉がノックされた。返事をすると、クロノとアリエッタが入ってきたのだった。噂をすればなんとやら。


「サク。奴等が動いたよ」

「ディストから報告が来た、です!」

『ん。報告ありがとー』


報告に来てくれたクロノとアリエッタを労いながら、サクは受け取った報告書に目を通した。ディスト曰く、エルドラントのセフィロトを通じて、ヴァンから接触があったらしい。漸くローレライが大人しくなってきたから、そろそろアブソーブゲートへ迎えに来てちょ★と御告げがあり、ラルゴとリグレットがいそいそと迎えに向かったそうな。※要約内容に少々語弊あり。

ヴァンを筆頭に、ラルゴとリグレットも、今や反逆者として捕縛要請が教団から出されている。二国にも協力要請も回っている。彼等に追随する者、捕縛を阻害する者達も同様だ。それでも彼等が捕まっていないのは、基本的にエルドラントに引き篭もっていた為だ。

とは言え、このようにディストのおかげで彼等の情報は、こちらに筒抜け状態であるのだが。まぁ、ヴァン達に間者だとバレても、ディストの生命力なら逃げ切れるだろう。

あ、勿論ディスト以外にも数名の監視がこっそりついてます。相手は六神将だから、危険を感じたら直ぐに撤退するよう命じてはいるんだけど……今のところ問題なく任務は継続されている模様。なかなかに優秀な隠密達である。流石に、ヴァンが復活したら手を引くように指示はしてありますよ?流石にね。


「ただいまー」

『!!お、おかえりシンク』

「…って。クロノとアリエッタ、来てたの」

「仕事でね。それより、紅茶でも淹れてよ。僕はストレート、アリエッタのは砂糖入りでね」

「は?なんで僕がアンタ達に給仕する必要があるわけ?って言うか仕事で来てるなら寛ごうとするなよ」

「分かった!アリエッタが淹れる…です!」

「ッツ!!ちょ、分かった!淹れてやるからアンタは大人しくしてて!」

「じゃあアリエッタも手伝っ…「わなくていいから!」


ため息を吐きながらも、紅茶を淹れる準備を進めているシンクである。アリエッタの気持ちは嬉しいけど、彼女の料理スキルがね…うん。シュンとしているアリエッタには悪いんだけど。あと、私の声が変に上擦っていた事は、上手く誤魔化されたみたいで何よりだ。


『彼等の行き先がアブソーブゲートだと……ルーク達と鉢合わせしそうだなぁ』

「え?それはいくらなんでも……いや、連中の悪運の良さを考えると…」


クロノが実に微妙そうな顔をしている。うん、それが有り得ちゃうんだよなぁこれが。シンクが「何の話?」と尋ねると、「ルーク達とリグレット達の事」とアリエッタが答えていた。

さて。それではルーク達の方は……今ユリアシティか。ルークに回線をこっそり繋いでみたら、ナタリアがティアに相談している様子を覗き見している所だった。…ストーカーじゃないヨ。私もルークも!相談の内容は、やはりラルゴとの件な模様。ふむ、どうやらナタリアにもラルゴの事を伝えたっぽいね。これでラルゴとのフラグも立ったし、タイミング的にもラルゴとの最終戦闘が起きるとみて間違いない。


『…よし。なら、こっちもそろそろ動こうかな』

「は?正気?」

「って言うかまだ安静が必要でしょ、アンタ」


シンクは紅茶をクロノに渡そうとしていたが、その動きを止めて半眼している。そこからヒョイとカップを取りながら、クロノも冷たい視線を向けてくる。何だかんだで仲良くなったもんだね、君達。



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