鮮血と烈風(1/8)

何となく、誰かに名前を呼ばれている気がした。けど、目を開けられなくて、そのまま意識は再び落ちていった。どれ位の時間が経ったのか分からないけど、今度は肩を揺すられた感じもして、先程よりは目が覚めてきた、様な気がする。けど、正直まだまだ眠い。重い瞼は開くことなく、再び意識が落ちていきかけ……たが、何となくいい香りが鼻先を掠めて。多分、そのせいかな……今度はちゃんと目が覚めた。

瞼を押し上げると、目の前にシンクらしきシルエットが見えた。シンク…?と呟くも、返事はないけど、何だか身動ぎした気配がしたから、多分シンクで合ってると思う。数回瞬きして、目の焦点を合わせると……ほら、やっぱりシンクだった。欠伸を噛み殺しながら、取り敢えず上体を起こす。こうしないと、また二度寝しちゃいそうだったので。



『ふぁ…おはよぅ……あれ?アリエッタは…?』

「そのアリエッタから、アンタが起きないって聞いて来たんだけど」

『え…?』



そう言えば、もう少し前にも誰かに起こされかけた様な気が…しないでもない。そんなに爆睡してたのか…。ちょっと恥ずかしさと申し訳なさから、思わず俯いていると、目の前に紙袋を差し出された。



「…はい。昨夜言ってたお菓子、作って置いたから」

『っつ!?マカロン!!!』



思わず飛び起きて、ベッドに上に正座する。眠気も今ので一気に吹き飛んだみたいです。両手でその紙袋を丁重に受け取り、ワクワクしながら紙袋の口を開いてみる。中には薄桃色のマカロンがあり、美味しそうな甘いお菓子の香りが鼻腔を擽る。さっきの香りの正体はこれだった模様。っていうか、この香り、そしてこの見事なまでの完成度……間違いない、これは正真正銘、シンクの手作りだ!



『わあー、シンク有難う!食べていい?』

「…、ドウゾ」



食べるのが勿体無い?けど、食べなきゃ勿体無い!と、いう事で早速試しに一口食べてみる。表面はサクッとしてて、中はしっとり、程よい甘さがじんわりと口の中に広がり、身体に染み渡る様だ。そうそう、これが食べたかったんだよ。むしろ、予想を遥かに上回る美味しさだ。表情筋も、これ以上ない程に綻ぶ。



『お、美味しい…!やっぱりシンク、お菓子も料理も美味しいよ!』

「っ…」

『…?シンク?』



感動してシンクを褒めたら、何故か彼は顔を片手で覆ってしまった。え、何?急にどうしたの?と不思議に感じた後、シンクの眩暈(?)の原因と思われる物が自身の手にある事に思い当り、サクはハッとする。



『大丈夫?…ひょっとして、寝不足?ご、ごめん!私がマカロン食べたいなんて言ったから…』

「いや、寝ずの番のついでに作っただけだし。それより、サクの方の体調はどう?」

『うーん。まだ眠いけど、特に問題は無さそうかな』



ベッドから起き上がり、軽く伸びをする。うぅ、き…傷痕が…捻挫が…!等々と、多少の支障は来たしているけど、取り敢えず動けるし問題はないさ。まだ疲れは残ってるけど、昨晩よりはコンディションもマシだしね。

っていうか、寝ずの番のついでって…見張りの方は大丈夫だったのだろうか?まあ、何もなかったみたいだからいいのか。なんせシンクだし。



「…起こしてから訊くのも何だけど、もうちょっと寝とく?」

『う〜…そうしたいけど、皆と一緒に朝食食べたいから起きる』



むしろ、その為にこうして起こして貰った訳だし。その代わり、アルビオールに乗ったら二度寝しよう、と心に決める。私が二度寝してる間にルーク達は先に出発しちゃいました、なんて事になったら勿体無い。それに、せっかくシンクが起こしに来てくれたんだ。



『シンクも、ベルケンドに着くまでの間になるけど、移動中位はゆっくり休んでね』

「…うん。そうさせて貰うよ」

『………?』



……あ、れ?気のせいかな。何か今、目を逸らされた気がする。というより、今朝は何だかシンクの様子がいつもと違う様な…?そんな違和感を感じたのも束の間。



「あと、出てくる前にちゃんと顔を洗って、髪は整えて来るように。ヨダレの跡といつもの寝癖が付いてるから」



安西先生、私、ストパーを掛けたいです…。







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