束の間の休息(2/8)

結局、吹雪ではアルビオールも飛べないという理由から、アッシュも最終的には折れてくれました。何だ関だ言いつつも、毎回付き合ってくれるアッシュもやはりツンデレだよね。



「毎回お前は本当に面白い奴だね、導師サク」

『えー?でもカンタビレ師団長、面白いも何も、吹雪じゃ足止めされても仕方が無いじゃないですか』

「この施設周辺のみのあんな局所的な猛吹雪が自然現象にあってたまるか」



師匠を舐めんじゃないよ。と、隻眼の女騎士は鼻を鳴らす。あらら、バレてましたよやっぱり。カンタビレ師団長の指摘通り、現在実際に吹雪いてるのは、この施設の周囲数十メートル程度だ。折角観光地まで来たんだ。私はスパで寛ぎたいんだよ。私はスパで寛ぎたいんだよ…!(※大事な事なので二回言いました)その為の局所的な擬似吹雪、私が楽しむ為なら禁術だって行使するさ。その程度の些細な苦労なら、禁じ手も苦労も厭わないぜ!(ぶっちゃけ通常戦闘でも常用してるしね)それに、禁術とはいえ、この猛吹雪もあくまで譜術の効果範囲内のみのモノだし。手加減だってしているので、その辺も踏まえて悪しからず。もう発動も止めてきたしね。

カンタビレ師団長曰く、私はくだらない事に全力を掛ける所が面白いらしい。以前、クロノにも似た様な事を言われた記憶がある。…あぁ、そう言えばさっきの彼等の反応的に、クロノやシンク辺りにもバレてるっぽかったなぁ。禁術故に、消し切れていない譜術反応に気付けば、割りと簡単に見抜けただろうし。…まぁ、アッシュの方も、気が立ってる事も相待って気付けなかっただけだとは思うけどね。ていうかそう思いたい。



『…あれ?師団長、着替え終わるの早くないですか!?』

「お前が遅いだけだろう」



おお…ふ。カンタビレ教官の水着は、黒ver.のレンタルビューティーでした。ティアに負けず劣らずナイスバディ、そして進撃のミカサ並のナイス筋肉!色気よりむしろ野性味溢れt…ゲフンゲフン。何て言うか、色々スゴイです…。ティアとはまた異なるタイプのクールビューティーなお姉様誕生の瞬間である。



「アリエッタも、どう…ですか?」

『お持ち帰りしても良いですか?』

「クロノに消されるぞ」



ちょっと気恥ずかしそうにしながら水着姿を見せてくれたアリエッタに即答を返したら、カンタビレ師団長から冷静な忠告を頂いてしまった。それにしてもアリエッタ可愛いっ!赤いリボンをアクセントに、ピンク色の可愛い水着と、薄黄色のリボンやフリルのヒラヒラがさながらリトル・マーメイドだよ!あ、ネズミ王国は無関係の方向でいきたいから、やっぱりマーメイドプリンセスで。ただし、ぴちぴちボイスでライブはスタートしませんよ?



『すっごく可愛いよアリエッタ!』

「えへへ……サクの水着も、可愛い、です」

『!有難うアリエッタ』



もう何この天使!本当に可愛い……っと、ああ、私?私は陛下お手製の水着です。白を基調に、橙のラインや金糸が特徴で珍しくシックな感じ。サイズがピッタリな件に関しては、何も言うまい。



「!サク、背中…!」

『ん?背中?……あ』



驚くアリエッタにつられて、鏡に背中を写して見て、自分でも漸く気付いた。というより、今更ながら思い出した。普段は見る事もあまり無いし、痛みも無いからすっかり失念してしまっていた。

私の背中には、以前ガイに斬りつけられた時の傷痕が、綺麗に残ってしまっていた。加えて、今回レプリカネビリムとの戦闘で腹部に受けた譜術が、大きな鬱血痕になっていて。二つも大きな痣がある状態で水着を着るのは……ちょっと抵抗がある。



『あー…普段着てる法衣とか守護役の衣装だと隠れて見えないから、完全に失念してたなぁ…』

「ふむ。背中に負傷を受けているのは、私の弟子にしては少々いただけないね」

『状況が状況だったので勘弁して下さい…』



これじゃあ水着が恥ずかしい云々の問題じゃない。お腹の痣を知られたら、シンクやフレイル辺りにまた何を言われるか分からない。特に背中の傷痕をシンクに知られたら、彼は自身を責めるだろうし。それだけは、出来れば避けたい。

うー…でも、せっかく陛下から頂いた可愛い水着を着れないのは悲しいし……包帯巻いて入るのも微妙だし…っレンタルビューティーを借りるしかないのか?でも、カンタビレ師団長やティアと見比べると見劣りしまくりだから出来れば遠慮したい…



「お前の得意のフォミクリーで何とかならないのか?」

『ならなくもないんですけど、治療後は暫く痛むし、リスクもあるから極力使いたくないんですよ……』



この怪我を負った際に、傷口を塞ぐ為に一度フォミクリーを使用してしまっている。傷が癒えた今も尚、この傷痕は私の身体の細胞とフォミクリーで作られた音素が元の擬似細胞で構成されている可能性が高い。下手にフォミクリーを使えば、音素の細胞部分が乖離して再び傷口が開くリスクがある上に、せっかく治った傷が、治療によって再び傷を負った様な状態に逆戻りだ。

あと、あまり私自身の体にフォミクリーを乱用するのは、賢明とは言えなかったりする。音素乖離こそしないが、稀に拒絶反応はあるみたいだし、私の体。

何より、せっかく温泉へ傷や疲れを癒しに来たのに、私だけ傷痕が痛くてゆっくり出来なくなるのが一番嫌です。でも、ここは譜術を駆使して何とか誤魔化すより他に手は無さそうかな…。正直面倒くさいけど、背に腹は代えられないし……仕方がない。私の本気、見てみるか!?…って、



「あ。もう一枚パーカーがついてる!これを羽織れば大丈夫そうかも…?」



水着とセットで付けて下さっていたらしきパーカーを発見し、試しに袖を通してみる。予想通り、背中の傷は見えなくならました。流石陛下。着る相手の事をよく考えて作って下さってある。斬り付けられた背中の傷跡が見えない様、パーカーまで付けて下さるなんて!そう言えば、私が負傷した件は陛下もご存知だったからなあ…。先日負傷した新たなお腹の鬱血痕も、これで目立たなくしたり隠したりも出来そうだ。



『良かった。もしパーカーが無かったら、第四音素譜術を駆使して擬似・湯けむりを作って誤魔化しつつ、第一音素譜術で痣を認識されにくく小細工しなきゃいけない所だったよ』

「馬鹿なのか天才なのか、お前は本当によく分からない奴だな」



あれ?何だかカンタビレ師団長に心底呆れられた気がする。



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