舞台裏の策略(3/7) 「行かせはせん!」 「タルタロスには俺の手も入ってるんだ!邪魔させるか!」 『はい天誅ー!』 「「ギャ―――!!?」」 「「「………」」」 街角で出待ちヨロシク待ち構えていた神託の盾兵達を、影から飛び出して来た街の人達が取り押さえ、そこにサクが譜術を落として神託の盾兵達のみを撃退する。そしてサクが先頭をきって容赦なく譜術を放っていく姿に、ルーク達は何とも言えない顔をしていたりする。 「いやぁ、導師サクを味方に付けると、何かと心強いですねぇ」 「むしろ敵に回したくない…っていう方が、大佐の本音っぽいですよね…」 「おや、バレていましたか」 冗談の様であまり冗談でもないジェイドの言葉に、アニスの表情が引き吊る。サク様もだけど、大佐も敵じゃなくて良かった…と、心底思っていたりする。 「海に落としてやるわ…何っ!?」 「ここは俺達が!さぁ早く!」 『いや、むしろテメェを海に蹴落としてくれるわ!』 「いやいやどっちが悪役だよ!?」 断崖へ回り込んだ時にも神託の盾兵に行く手を阻まれ、其を街の人達が押さえ付け、サクが譜術で神託の盾兵達を言葉通りに海へと吹っ飛ばす。あ、蹴落としてなかったか。何にしろ、ルークのツッコミは最もだ。実は影で譜術の詠唱をしてた第六師団の人達も、遠い目をしていたり。あ、導師サクに出番を取られた…的な感じに。 それにしても、防衛は第六師団に任せろって言ったのに……頑固な職人気質なせいか、街の人達は皆血の気が多くて困る!危ないって言ったのに!! とはいえ、気持ちが分からなくもない。 彼等が作る音機関一つ一つには、全て職人達の命が吹き込まれている。だからこそ彼等は、自分達の作った装置を守る為に、その誇りを懸けて、身体も命も張るのだろう。そんな彼等に大人しくしていろ、なんて言うのは無理な話だった、という事か。うん……襲撃に備えて、数日掛けて街の人達全員に味方識別を施して回っておいて本当に正解だったと思う。 「ルーク様!ナタリア殿下!北の出口が手薄です!急いで…」 「サク様、此方です!」 『有り難う!』 市民や第六師団の兵達に先導され、その度にサクがヴァン側の兵に譜術を放ちながら、ルーク達は港を目指して走る、走る、走る。 「教官……民間人を手に掛けるなんて……」 「平和条約の時には妨害してこなかったのに!」 「主席総長の目的にとって平和条約なんてどうでもよかったって事?」 「そうでしょうね……」 ルークとアニスが憤る中、ティアは何処か悲しそうだ。リグレットが民間人を襲おうとした事が、彼女にはショックだったのだろう。 「くっそ!この肝心な時にアッシュの奴は何してんだ!」 「いない奴の事なんか気にしてらんないよ!」 『いやいや、アッシュなら港の方にいる筈だけど』 「「ぇえ!?」」 アニスとルークの声がが見事にハモった。そんなにも意外だったのか…? 「アッシュが…!それは本当ですの?」 『本当だよナタリア。今回私達がリグレット達の襲撃を事前に知る事が出来たのも、アッシュのお陰なんだ』 「どういう事ですか?」 巨大化したトクナガに担がれたイオンに、詳しい説明を求められた。成る程、虚弱体質なイオンに長距離走は厳しいからね。流石アニスだ。て言うかトクナガに乗ってとか可愛いなイオン! 『アッシュはずっとヴァンの動向を探ってくれてたからね。情報をリークして貰ったって訳。それで皆が二国会談へ行ってる間に、カンタビレ師団長に頼んで第六師団を呼び寄せておいたんだ』 「まぁ!私達がいない間に、導師サクはそんな事を…」 「じゃあ、あのモースがサクの代理で会談に現れたのも、サクが本当に頼んだからなのか…?」 『そうそう。色々説得しておいたから、なかなか協力的だったでしょ?』 ガイの見解に頷いて見せると、ルークとティアが互いに顔を見合せた。 「あのモース様を説得されるなんて…」 「想像出来ねぇ…」 二人には説得されるモースをイメージ出来ないらしい。確かに、あの預言尊守を謳ってたモースの方向性が、急に180度変わればねぇ……。ちなみに、他の面々も似たような反応だったりする。 そんな感じで何とか無事にシェリダン港へと辿り着くと、早々にアストンさん達と合流する事が出来た。彼等の無事が分かり、ルークがパァッと表情を輝かせた。 「アストンさん!ヘンケンさん!キャシーさん!」 「おお!アンタらも無事だったか」 「"も"という事は、此方にも神託の盾兵が?」 ジェイドの問いに、ヘンケンも「ああ」と頷く。 「危うく神託の盾の奴等にタルタロスを奪われそうになったが、同じ神託の盾の奴等に守られてな」 「何かややこしいよな…」 「呑気に立ち話をしていていいのか?」 『「「「!!」」」』 後ろから聞こえてきたヴァンの声に一同が振り返るのとほぼ同時に、サクは咄嗟に譜術防壁を張ったが、衝撃で後退させられてしまった(解せぬ!)。今のに体勢を持ちこたえたのはジェイドと私くらいだった様で、他の皆はヴァンの譜術によって見事に吹き飛んでしまっていた。 *前 | 戻 | 次#
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