世界を駆ける(6/9)

えー、前回ユリアシティに向かうとか言っておきながら、現在地はシュレーの丘にあるセフィロトに来ております。

ちゃんとユリアシティにも行ったけど、半分寝掛けてたから割愛します。ほとんど原作通りの反応で、特筆事項も無かったし。計画通り!…って訳じゃないけど。



「此れが、セフィロトの中ですか…」

『何だか幻想的で綺麗だよね』



感嘆の声を漏らすフレイルの隣を歩きながら、サクも辺りを見回して言った。

セフィロトの中の空気はひやりとしていて、とても澄んでいた。通路の先は巨大な円形の広場に続いており、その両脇に巨大な音叉の様なものが浮いている。広場の向こうには更に奥へと続く通路があって、それは光の亀裂へと吸い込まれる様に続いていた。

ゲームで見たままの不思議な景色が、そこには広がっていた。

蒼い光が線を描いて走っている透明な床を歩いて行き、サク達はパッセージリングの前まで辿り着いた。



「ただの音機関じゃないな。どうすりゃいいのかさっぱりだ」



パッセージリングを見上げて、その複雑な構造にガイが唸った。中央に抱かれた巨大な譜石は輝きを失い、眠ってでもいるように見える。



「テオドーロさんは第七音素を使うって言ってたけど……どうするんだ、これ」



ルークが真剣な眼差しで、パッセージリングを見上げる。とその時、イオンが声をあげた。



「……おかしい。これはユリア式封咒が解呪されていません」



イオンが床から突き出た装置に近付き、眉を顰めた。

……あれ?ティアが結構操作盤に近づいてるのに、操作盤が反応してない。サクは思わず表情を顰める。

……まさか、あの面倒くさい作業を本当にやらなきゃいけないの…?



「どういうことでしょう。グランツ謡将はこれを操作したのでは……」

「え〜、ここまで来て無駄足ってことですかぁ?」



ジェイドの呟きに、アニスがむくれ、不満を漏らした。



「皆さん、此方に来て下さい!」

「「「!」」」



……って、うぉう!フレイルさんいつの間にあんな所へ!!?

フレイルの声が聞こえた方へと、皆の視線が向けられる。フレイルは輪の通路の先…三方向に向かって伸びる道の基点で立ち止まり、床を見下ろしていた。皆が彼の傍まで行くと、それぞれの道の基点に計三つの譜陣が輝いていた。



「ふむ……おそらくこの三つの譜陣によって、パッセージリングの制御を封じているのだと思います」

「じゃあ、此れを何とかすれば良いのか?」

「恐らくは……」



膝をつき、指で譜陣をなぞりながらジェイドが述べる。ルークは譜陣を見詰めたまま、肩を落とした。



「これも、師匠の仕業なのかな……」

「それはどうでしょう」



ジェイドは眼鏡を押し上げた。



「彼に、ユリア式封咒を施せるとは思えません。ただ、色々と知ってはいるようですが―――貴方の超振動の事もそうですし、セフィロトの事もそうです」

「ヴァンは本当に色々な技術を持っていますのね」



ナタリアが呟くと、アニスがだよね〜と大仰に頷いた。



「知識もあるし、頭のキレもすっごいし、剣術もすごいし、第七音素も扱えるし。超人だよ、ちょーじん。髭だし」

「髭は能力ですの?」

「髭は能力だよ〜。主席総長はきっと髭から力が出てるんだよ!」

「まぁ……!あの髭にそんな秘密が……」



ナタリアがアニスの言葉を全く疑っておらず、本気で驚いているのを見て、アニスの目がキラリと光った。



「何気に眉毛も凄いよね」

「眉毛まで!…眉毛には一体どんな力がありますの?」

「眉毛はね〜……索敵装置だねっ。あと、人心を操る恐るべき催眠能力を放っているのであった!」



え、って事はルークはあの髭の眉毛によって超振動発動の暗示を掛けられていた事に……?うっわ、何か嫌すぎる。



「さ……さすが神託の盾の総長ですわ。侮れませんわね」



ごくりと生唾を飲み込むナタリア。何故そこまで信じる事が出来るのか不思議過ぎる。天然って恐い。



「ティア、あんなこと言ってるけどいいのか?」

「い…いいんじゃないかしら?」



二人の会話に、苦笑混じりにガイがティアに訊ねる。ちなみにティアの表情も、若干引きつっていたり。妹として複雑な心境なのか、はたまた髭から超人パワーを出す兄を想像してしまったのか……ティアなら後者も有り得そう。

フレイルも苦笑いを浮かべている隣で、実に楽し気に笑っていたジェイドが、まあ髭はともかく、と話を終わらせに入った。



「グランツ謡将はその知謀を生かす能力を持っているようです。これからも先手を取られ続けると、少々厄介ですよ」

「でも、どうするんだ?戦っても勝てるかも分からないし、何より居場所が分からないぜ?」

「アッシュなら何か知っていると思うのだけれど……」



ガイの言葉にティアが思案気に呟くと、ガイは「アッシュねぇ……」と、何処か胡散臭げに呟いた。う〜ん、そんなに嫌そうな顔をせずとも…

とはいえ。そういえば、今頃アッシュはどうしてるのかな。ルークとジェイドの会話から少し気になった。あれから同調フォンスロットも繋げてみてないし……ちょっと気になるかも。

きっとまだ私の事を疑ったままなんだろうなぁ……う〜ん、どのタイミングで誤解を解けば良いのやら。説明した所で、聞く耳を持ってくれるかどうかすら怪しいし。



「兎に角今は、このパッセージリングです」


パンパンと手を叩き、ジェイドが目的を思い出させるかの様に、皆に向かってそう言った。

さあ、行きましょう。とジェイドに先を促され、皆が奥の部屋へと進み始めたのを見たサクは、内心ボヤク。

嗚呼、やっぱりやるんだ。あの面倒くさいダンジョンの仕掛け攻略。フレイルの後ろに隠れながら、サクは一人小さな溜め息を溢した。



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