ライガクイーン(3/6)


『……アリエッタ、クイーンに伝えてみてくれる?』

「!分かった、です」


アリエッタ以外の自分達には未だに警戒を解いて貰えていないので、なるべくクイーンを刺激しないよう、クイーンのテリトリーに入るギリギリの所からアリエッタに頼んだ。

アリエッタはサクの言葉に頷くと、クイーンと交渉を始めた。このままここにいると、いずれ人間達に討伐されてしまう恐れがある為、もう一度住処を移動して欲しい……と。

クイーンと話し合い、暫く経ってからアリエッタが少し困った様子で此方に振り返る。


「卵が孵る迄、ライガママ、此処を離れられないって……」


まぁ、普通そう言うよね……とサクは内心思う。ルーク達が交渉に来た時もそうだったし、ライガクイーンからしてみれば当然の答えだとも思う。

そもそもの原因を考えると、ライガに否はない。その分、チーグルが被害に合っても自業自得といえばそれまで何だけど……人間の都合上、そうもいかない。

卵が孵った場合、ライガの子供は人間の肉を好む。ここからエンゲーブの街が近い分、食料以外に人的被害が必ず発生するだろう。

両者が共存を果たす為には……ライガクイーン達にこの場を退いて貰う必要がある。


『卵が孵ってからでも構わないので……って伝えて』


サクに頼まれ、再度説得に試みるも……アリエッタは此方を見て首を左右に振る。


「アリエッタ以外の人間は、信用出来ないって…」

「……あの魔物、卵もろとも燃やしてやろうか」

『ちょ、ボソッとそういう事言わないで!?』


アリエッタには聞こえないように呟かれたクロノの言葉にサクが焦る。

ギリギリとクロノの音叉を握る手に力が隠められる。アリエッタのママじゃなければ、とっくにダアト式譜術が発動していたに違いない。


「―――、……、サク!」

『ん?』

「えと、どうしても移動して欲しいなら、力で示せって……」

『……やっぱりそう来ますか』


ライガなどの野生生物の世界は、弱肉強食の世界だ。母として卵を守る為、ライガクイーンのプライドにかけても、弱者に従う気は無いだろう。此方の要求を通したいなら、力で従わせてみろ……という事か。何だかゲーム的な展開……とか考えてしまう自分は、周りと比べて結構余裕があるのかもしれない。


「……サク、アンタ最初からこうなるって読んで僕らを呼んだでしょ」

『アハハハハハ……』


わぁ〜、クロノの笑顔が恐〜い。笑顔を強張らせるサクの傍で、似たような反応を見せるフレイル。彼に関しては「仕方ありませんね…」と苦笑しながらも、既に刀の柄に手を掛けている。抜刀の準備万端だね。


『……クイーンの意思は分かった。けど、此方も退く訳にはいかないから、クイーンの言う通り力を示す事にする……って、クイーンに伝えて』

「……サク、ママと戦うの?」

『うん。手加減は出来ないけど……殺したりはしないから安心して。あと、戦闘が始まったらアリエッタは下がってて…』

「!アリエッタは導師守護役、だから、サクとクロノを守るのが役目、です!」

『けど、ライガママと戦うなんて…』

「アリエッタもサクと一緒に戦って、ママを説得します!」


アリエッタの決意は固いらしく、じっと意思の強い瞳を向けてくる。クロノにどうする?と視線だけで問えば、此方の戦力が増えるに越した事は無いね。アリエッタが良いなら良いんじゃない?という感じ。

アリエッタはアリエッタで、ライガクイーンに自分は向こう側につくと伝えたらしい。けど、ライガクイーンはアリエッタの言葉に怒った様子も無く、むしろ娘の成長に目を細めている感じだし……良いのだろうか。


「あとは、サク様の同意だけですね」

『………フレイルも賛成派なんだ』

「アリエッタ様自身が決めた事ですし、私が口出し出来る事でもありませんから」


フレイルの意見は最もだ。私にも当てはまる事だし。……クロノじゃないけど、ライガクイーンを相手にするなら戦力は多いに越した事は無いか。


『……仕方ないね』




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