過去の罪(2/6)

ベルケンドへ向かう航海中、タルタロスのデッキから海を眺めていると、そこにアッシュがやってきた。今はタルタロスを自動操縦に切り替えているのだろう。

ていうか、ルークといいアッシュといい、二人ともよくここに来るよね。同じように来てる私も他人の事を言えないんだけど。



「お前はアイツがいる所に残らなかったんだな」

『まぁね。いつまでもダラダラしてる訳にはいかないから』

「それはテメェだけだろ」



確かに、タルタロスで皆が意気消沈してる時に空気も読まずにダラダラと寝て過ごしてたのは私だけさ!でも、無駄にダラダラしてた訳じゃないぞ。ちゃんと休める時に休んでただけなんだから!……とは、口が裂けても言えない。



『それに……ルークなら、大丈夫だよ。きっと前に進める』

『その為には、先ずは周りを知り、自分自身を知り、そこに在るありのままの現実を受け入れなくちゃいけない。それが今のルークの課題かな。この先どうするかは、それから彼自身が考える事だしね』

「(サク……)」



今、ルークがアッシュを通してこの会話を聞いていると知っててこんな事を言う私はかなり狡い奴だと思う。でも、これは紛れもなく私の本心だし、ルークが前に進む為のヒントになったら良いなとも思っている。

これ位の事しか、私にはルークにしてあげられないからね。



『だから私は、ルークを見捨てた訳でも、見限った訳でも無いよ。私は一足先に地上へ戻ってるから、ルークも早く追い付いておいで……って感じかな』

「フン、どうだかな」



私の反応はアッシュには予想通りだった様で、軽く鼻で笑われた。てっきり面白くない、って顔をされるかと思っただけに、此れはちょっと予想外かも。



『そういうアッシュも、案外優しいよね』

「ああ?何でそうなるんだよ」



アッシュが今回ルークと同調フォンスロット繋いだのも、最初は皆がルークから離れて行く現実を見せる為の、ただの嫌がらせが目的だったかもしれない。ルークに現状を理解させて自身の立場を自覚させる、って目的は恐らく後付けだと思う。

自分のレプリカがあまりにも不甲斐なくて、こんなの俺は認めねぇ!こんな屑が俺のレプリカだなんて!!というのが、レプリカ=自分のコピーていう考えに近いアッシュの心の葛藤だろう。



『本当にルークの事が憎いだけなら、短気なアッシュはとっくにルークを斬り殺してるでしょ』

「それを止めたのがお前だろう」

『今だってさ、何だかんだでルークの事を心配してるじゃん』

「誰があんな屑の心配などするかっ!!」



素直じゃないねぇ〜とからかってあげたら、プイッ、とそっぽ向かれてしまった。そのままこの場を去ろうとするアッシュに、サクはもう一度声を掛ける。



『アッシュ』

「チッ、まだ何か用があるのか」

『貴方も一人にならなくて良いんだよ』

「………」



返事は無かった。けど、離れて行くアッシュの背中は、やはり何処か遠く感じた。



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