夜のタタル渓谷


「そろそろ帰りましょう。夜の渓谷は危険です」

―――…ドサッ

「「「「 ? 」」」」



ジェイドの言葉の後に、何かが落下した音が夜の渓谷に響いた。一瞬、魔物が現れたのかと、一同が警戒しながら振り返った先には―――…2年前、栄光の大地でルークの代わりにローレライを解放してから姿を消していたサクがいた。

かつての仲間達が驚いた表情のまま固まっている中……サクは辺りを見回し、ここが夜のタタル渓谷である事と、久しぶりに見た仲間の存在に気付き、パアッと表情を輝かせてた。



『皆っ!ただいま!!』

「っ、本当にサクなんだな!?」

『ルークも久しぶり!お、アッシュもいるじゃん♪』

「てめぇ、俺はオマケじゃねーぞ!?」



かつて、私が画面越しに見たEDの展開とは違う結末を迎えたこの世界。帰って来たのは第三のルークではなく、私。また、本来ならこの場にいなかった筈のイオンやルーク、アッシュがいるのは、サクが未来を変える為に奔走した成果でもある。

懐かしさと共に、再び会う事が出来た嬉しさに思わず泣きそうになる。アシェルも今頃……仲間達と再開を果たしている頃だろうか。



「…あれ?サク……後ろにいる人って、誰?」

『え?』



呆然と私の後ろを指差すアニスの呟きに、サクは後ろに振り返り、他のメンバーもつられてそちらに視線を向けた。

後ろにいた人物の顔を見て、サクはピシリと固まる。……あれ?何で?



「んな…まさか、レプリカか!?」

「それともドッペルゲンガー!?」



驚愕するルークとアニス。勿論、他の面子も似たような反応をしてたりする。そんな彼等の困惑し切った様子を見て、私の後ろにいる人物は困った風に苦笑……というか、むしろ引きつった笑みを浮かべていた。



『って、アシェル!?何で!!?』

「……またローレライに間違われた…」

『またかよ』



いい加減にしろよなあの空気王。何回間違えりゃ気がすむんだコノヤロー。ガックリと肩を落とすアシェル……いや、今はもうルークになるのかな?に、思わず同情せずにはいられないサクであった。


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