ローレライ降臨


「サク、アシェルにもお礼言っといてね。僕も生き恥を晒しながら生きてみるよ……ってね」

『全くもう、ミトスは…』



私とミトスが最後にそんな会話を交わした後、クラトスとミトスの二人は旅立って行った。ロイドは……今は少し、ソッとしておいてあげようと思う。



「……行ったみたいだな」

『全く、ついて来てたんなら出てきても良かったのに』



岩場の陰から姿を現したアシェルに、サクは思わず苦笑する。コッソリついて来たものの、どうやら私達に気を使ったらしい。



<<またもや私の見た未来を覆してくれるとは……お前達は誠、驚嘆に値する>>

『……アシェル、今何か言った?』

「いや、今のは俺じゃない」

『「…………」』



聞き覚えのあり過ぎる声に、二人の視線は自然と声の発生源と思われる物……ローレライの鍵へと向けられる。



<<この世界のマナが安定した今、漸くお前達にこうしてコンタクトを取ることが出来た……元気だったか?聖なる焔の光と異世界の者よ>>

『「Σローレライ!!?」』

<<如何にも>>



ローレライの鍵から、聞こえる声。そういえば、鍵がそこはかとなく金色の光を帯びてるよ……え?ナニコレ?ていうか無駄に多弁だな、ローレライの野郎。寂しかったとかほざくなよお前?



『ローレライ。取り敢えず……一発殴らせろ?』

「気持ちは分かるが止めとけサク。手が痛いだけだ」



経験者は語る。サクより先に無言で一発ローレライの鍵を殴ったアシェルが、手を抑えながら痛みに身悶えている。

レイディアント・ハウルにしときゃ良かった……とか泣きながら呟いてるけど、そこまでしちゃうと今度はローレライとの通信媒体が壊れるから駄目だよ。



<<だからといって私を氷漬けにするのもどうかと思うぞ、サクよ>>

『秘奥義は諦めてあげたんだから、ありがたく思いなさい』



アシェルの敵も取り、ほんの少しだけ気持ちがスッキリした所で本題に入ろうと思う。



『私とアシェルを各々のオールドラントに戻して貰う事は当然として……アンタの力でアシェルを、ルークとアッシュに再び分離する事は出来ないの?』

「!サク……」



アシェルが驚くのも無理はない。そんな考えを、一度も口にした事も無かったからね。



『今のアシェルを否定してる訳じゃないよ?けど……今のままじゃ、アシェル自身が辛いのも事実でしょ?』

「………やっぱ、サクには全部お見通しなんだな…」



アシェルは、ルークとアッシュの間で大爆発が生じて再構成された人格……いわば、第三のルーク・フォン・ファブレだ。故に、彼はルークの記憶を受け継いだアッシュ……と本来ならばなる筈だったが、大爆発が生じる通常の過程より早期に、被験者であるアッシュが死んでしまった。そうして、一度アッシュの情報はルークの中に流れ込んだ。

その後、音素解離を起こしたルークはアッシュの身体に吸収され、記憶と共に再構築され……結果、本来起こる筈だった大爆発の結果とは少々異なり、アッシュの記憶を受け継いだルーク寄りの人格が形成された。

この事により、アシェルはアッシュに対して罪悪感を抱えていたのだ。これは、ルークがアッシュの過去を全て知った負い目からくる、感情である。

そんな思いがあったから、アシェルは最初……ロイド達に名前をきかれた時、自身を"ルーク・フォン・ファブレ"だと、名乗れなかったのだ。

だからこそ私は……ルークとアッシュの記憶をもう一度分離して、肉体も再構成させて、アッシュとルークの二人に戻せないのかと、ダメ元でローレライにも尋ねた。ローレライからの答えは当然NOだろうと、分かっていても。

そんな風に自嘲気味に笑う私に向けて、ローレライが出した答えは当然……



<<出来るぞ>>

『「Σ出来んのかよ!!!」』



シリアスな雰囲気が一気に瓦解した瞬間であった。

出来るなら何故最初から大爆発を防いでくれなかったのか。ローレライ曰く、<<だって、別に頼まれなかったし……>>との事で。

音素意識集合体が"だって"とか言うなよ。つーかお前マジ空気読め。という具合に溜まりに溜まった二人のストレスがそれこそ大爆発を起こし、結局ローレライの鍵に向けて二人の秘奥義が炸裂したそうな。

めでたしめでたし…



(何かちっともめでたくねー! By.たまたま現場に居合わせたロイド)


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