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天然は時に罪である

何はともあれ、先程の彼女の言動から察するに、どうやらこのアニスも間違いなく"戻って"きてる様だ。ちなみに今はティアが公爵家から直接エンゲーブ迄疑似超振動で来た事を説明していたりする。



「ルーク、ティア、ミュウ。皆さん本当にお久し振りです…」

「イオンさんもお久し振りですのー!」



向けられるあの頃と変わらない、優しい笑顔。ローズさんに人払いを頼んでいた辺りから、彼も逆行してきている事には気付いていた。前回はザレッホ火山で今生の別れとなってしまったイオンとの再会に、ルークはまたしても目頭が熱くなるのを感じた。



「せっかく前の時に「俺と一緒にチーグルの森へ行ったイオンはお前だけだ!」と言って頂いたのに、今回は一緒にチーグルの森へ行くような用事は無いので残念ですね…」



うっ…改めて言われるとなんつー恥ずかしい台詞ほざいてたんだ俺は!確かにあの時は切羽詰まってたし死ぬ間際とかで必死だったけれども!しかもイオンはイオンでそんな歯が浮くような台詞を一字一句間違えずに覚えてるし!ぬああああ!!とどめに本当に素で心から残念がってるイオンに対して「そんな恥ずかしい台詞まだ覚えてたのかよ?さっさと忘れろよな☆」な〜んて茶化せる雰囲気でもねぇし!!ナニコレ?一体何の羞恥プレイなんだ!?

うわぁああと例によって例の如く頭をかきむしりまくるルーク。と、そんな彼を微笑まし気にニコニコと見守るイオンは、見守る事自体が今のルークにとってはむしろ逆効果になっている事には気付いていない。

ジェイドやアニスはルークの心境を察しているが、面白がっている為にわざわざイオンに教えたりもしない。こういう時にいつも止めてくれるティアやミュウに関しては、何故ルークが恥ずかしがっているのか理解していない為、フォローにも入らない。

この状況はルークにとっては、完全な悪循環でしかなかった。



「立ち話も何ですし、ルーク達も奥の部屋へ入りませんか?エンゲーブ産の林檎を使ったアップルティーと付け合わせのアップルパイも美味しいですよ?」

「是非頂きます!」シュタッ

「Σ切り替え早ッ!?」

「イオンさん有り難うですのー!!」



イオンがルーク達にお茶(ローズさんがイオン達に用意した物でだが)の誘いを掛けると、ルークがいの一番に即答して無駄に素早い身のこなしで席に着いた。アニスがていうか食い意地張りすぎ〜、と更なるツッコミを呟いていたりする。

こうして、一時はルーク達の乱入により中断していたイオン達のお茶会は再開した。ここに揃った全員が二回目という事もあり、何とも平和過ぎる和平の使者達である。


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