05

ブルータス、お前もか



「そこの侵入者、覚悟致しなさい!」



ティアに引き続き突如現れたナタリアの手には、ドレス姿には少々不釣り合いな弓矢が握られている。厳しい表情でギリリ、と引かれる矢にルークはハッと我に返って焦った。



「ま、待てナタリア!ティアは……」

「降り注げ星光、アストラルレイン!」

「ぐああああっ」

「「Σ!?」」

「あら、私とした事が、間違えてヴァンに…」



ナタリアの秘奥義により追い討ちを掛けられ、ヴァンは最早完全に戦闘不能に陥っていた。にも関わらず誰も彼には同情など欠片もしておらず、加害者であるナタリアに関しても言葉とは裏腹に悪びれた様子は皆無である。

こうも似たような展開が続けば、もう説明は不要だろう。



「ナタリア…、貴女もなのね!」

「ええ。お久し振りですわティア。それにルーク」



自分達と同じく、"前の記憶"を持ったナタリアの登場に、ティアは頬を綻ばせた。虫の息な己の兄は、完全にシカトされている。

ちなみに、ガイはティアの譜歌で眠っている上、"前"の記憶が無い為に彼も放置されたままである。哀れ、ガイラルディア。



「こうなってくると、ジェイドやイオン達にも"前の記憶"が戻って来てる可能性が高いな」

「そうね。私も一度確認した方が良いと思うわ」

「このまま公爵家に居てはティアの立場も危ういですし……髭の計画を未然に防ぐ為にも、ここは彼らと合流するべきですわね」



取り敢えず、ティアとルークは前回と同じくエンゲーブでイオンとアニス、そしてジェイドと合流する事に決まった。



「ナタリアは、今回はどうする?」

「私は、今のうちにお父様と決着を付けておきますわ」



決着、というのは偽姫問題の事だろう。モースによる余計な介入が無い内に解決しておこうという魂胆なのだ。

一人で大丈夫か?と些か彼女を気遣って心配するルークに対し、ナタリアは心配に及びませんわ、と何やら自信がある様子。

ついでに預言の在り方についても色々と行動を起こそうと企んでいたりするのだが、流石にそこまではルークは知らない。ティアは何となく勘づいている様だが。



「分かった。じゃあ、互いに命運を祈るぜ」

「ええ。二人ともお気をつけて」



こうして、ティアとルークは疑似超振動を起こしてタタル渓谷に……ではなく、直接エンゲーブの近く迄飛んだ。何故コントロール出来るかって?だって二回目ですから☆


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