物語









結末は何時も変わらない。


変えようと必死に頑張る者、傍観する者、といろんな者がいるのは彼女が一番理解している。

暗黒対戦からどれぐらいがたったのかなんて数えるのは飽きてしまった。



自分は実態をもたない存在。昔、肉体と精神を引き離されたと言った方が正確だ。

今は彼女、セレンの精神を拠り所にして活動している。そして今は力が少し戻りセレンから離れる事ができる。

そして意識がはっきりさせ、目を開いてみると何処か懐かしいバラ園だった。


「あら、珍しい客人だこと」

「って事は君の城ってわけだね、レイチェル=アルカード…久しいね」

「そうね、今更幽霊で出てきても困るわ。まさかこれに関わるつもり?」

「そんなことないさ、私は何時でも快楽を求める傍観者の魔女さ…」


そうくすりと笑い黒いドレスの金髪の少女を見る。レイチェルを上から目線で見ていた。

彼女とは本当に何十年ぶりに会ったんだろうと干渉に浸っていたが今となってはどうでもよかった。


「まさかこんな所に来るなんて思ってもいなかったさ」

「なら早くここから立ち去ってくれるかしら?貴女がここにいると不愉快だわ」

「ふふっだけど私だって好きでここにいるわけではないさ…」

「あら、幽霊になっていろんな所に行けるかと思ったわ」


二人は ニコリと笑いお互いをけなすように言葉を選ぶがあまり気にしてないらしい。

今の彼女は浮いて体が透けてる幽霊。ゆらゆらと揺れてレイチェルをじっと上から目線で見ている。


「さて、そろそろ飽きてくる頃だね。もう何度も同じ結末でつまらないと思わないかい?」

「それには同意見だわ。貴女が出れば結末は変わるわよ」

「馬鹿言わないでくれるかい、私はあくまで傍観者さ。楽しい事は好きだけど私は観る方が好きだね」


ニコニコと笑いながら彼女はレイチェルの周りを面白そうに浮く。



表に出るのは何時ぶりになるのだろう。永遠と続く世界で彼女はずっとセレンの中でずっと見ていたからだ。

それがふと表に出ることができた。それがなんでなのかは分からないがこれがこれで面白そうだ、そしたら何処へでも行ける。


「全く貴女は変わらないのね」

「そりゃあ変わらないさ。だって私は私だもの、変わってしまったら面白くない」


そう呟き空を観る。彼女はやはり表を懐かしんでいる。


「さて、レイチェル=アルカード面白い事が始まるよ。終から始まりへと続く物語が」

「……!?」

「ふふっ…あぁなんて素敵なんだい、早く観てみたいね…さて、私は観に行く事にするよ」


不気味な笑い声が彼女の口から溢れる。レイチェルはそれに恐怖を感じた。

紅い瞳が観る光景はまさに滑稽な御伽噺かのように面白く、残酷な光景なんだろうとレイチェルは思った。


「さて、そろそろ失礼するよ。ここにいても面白くないしね」

「そうしてくれるかしら。もう二度と来ないでくれるかしら?」

「そうね…自分の意志では来ないわね。…ふふっじゃあまたねって言ったほうがいいかしら、小さな傍観者さん」


彼女は口を歪ませてこの場から消えた。








ある少女は繰り返す世界から抜け出そうと必死にもがく。その先の未来が見たいから、繰り返す世界が嫌いだから。

そんな少女は今物語の中にいる。それでどう動くか傍観者は楽しく観ていた。


ある少年は全てを失い、力を得た。仲間を守るため、大切な人を守るために魔女と契約した愚かな青年。

そんな少年は大切な人を見つけて守ると決意した。傍観者はそれを大人しく観ていた。


ある青年は感情を失ってもなおある人物の事ばかり想っていた。だけどその想いは歪んでいて滑稽だった。

そんな青年はその子との約束を果たすためにもう一度会いに行く。傍観者はそれを黙って観ていた。


一冊の本の中に色んな物語がある。傍観者はその物語を観ていた、ずっと面白そうにつまらなそうに観ていた。


「さて、そろそろ幕開けをしてほしいものだね…そう思うでしょ?」


クスリと笑う傍観者の目の前には彼女そっくりな少女が立っていた。


「何処に行ってた」

「少し懐かしい人物に会ってただけさ…で、君はどうしてここに?」

「別に…お前は外野から観ていろ傍観者」


呆れた顔をしながら少女は傍観者を見ていた。彼女も愛おしそうにそれを観ていた。


「さて、この物語を楽しくしてもらいたいね」

「傍観者は黙って観ていろ。じゃないとややこしくなる」


嫌味そうに言う少女はこの場から消える。一人になった傍観者は上を見上げてこう思った。


早く結末を変えて新しい物語を見たい…と






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