人物








統制機構カグツチ支部、カテドラル内部。彼女の意識はそこに浮上した。

懐かしい、彼女は干渉に浸っていた、だがそれは過去であり今となってはどうでもいい事でもある。だから思い出に浸っていてもすぐにどうでも思ってしまう。

彼女の姿は誰にも見えず、すれ違う者に誰もが気づかない。だがある人物だけが気づいていた。

全身黒で覆われた服、緑色の髪、その姿は何度見たのだろうと笑ってしまう。

目が合う。彼は彼女を認識して会釈をする。そして一瞬だけ彼は上を見上げて何処かに行ってしまった。


「(上…屋上に来い、か。私を誘っているのかい?)」


笑いがこみ上げる。

彼が誘っている屋上へ向かうため彼女はふらりと動き始める。



屋上へふらり現れると先ほど彼女を認識した彼が立っていた。幽霊のようにふらりと彼の隣につく。

再び目が合うとお互いが認識し、クスリと微笑んだ。


「お久しぶりですね、と言えばいいですか?ヒスカ=センヅキさん」

「さぁ、君がそう思いたいならそう思えばいいさ」


クスクスと微笑みながら彼の周りを浮遊する。それは楽しそうに浮いてる彼女に彼は微笑んだ。


「相変わらず自由な人ですね。だからこっちも色々と大変なんですよ。解ってますか?」

「解らないね。私は自由に観てるだけさ、君達に干渉するかしないかのギリギリな立場でね…」

「よく言いますよ、現に貴女はここにいる。思いっきり干渉してるじゃないですか。全く本当に自由な人」


彼は溜め息をつきながら彼女の目を見る。

彼女もそれに応えるかのように彼の目を観る。彼が観る世界はとても面白くてあきない、だから何時も彼の隣にいるんだと彼女はふと思う。


「で、今回は何で透けてるんですか。まさか幽霊になったとか言わないでくださいよ」

「まぁ幽霊と言われても仕方ないね、だけどこれは仕方ないのさ、だって私の肉体はまだ静かに眠ってるんだからね。簡単に言うと意識だけで動いてるのさ」


目を閉じる。自分の体は何処にあるのだろう。いや、何処にあるのかは解っている、だがそこにたどり着く事ができないからこうして意識だけの状態なのだと。

暗い闇の中、彼女の体はそんな所にある。誰も行けない、誰もたどり着けない、もしたどり着けるとしたかあの子≠セけかもしれない。

だから今はこの状態で我慢してるのだ。あと少し辛抱すれば全てが解決すると信じて。


「それで、要件はなんだい?まさか意味もなく呼び出したとか言わないよね」

「ご察しの通り、意味もなく貴女と話したいと思いまして。なにせこうやって二人で話すなんて随分久しぶりなものですから」

「ふふ、可愛いこと言ってくれるね。確かにこうやってちゃんと二人きりで話すなんて久しぶりすぎて忘れてしまったよ」

「男に可愛いって言わないでくださいよ」


少し恥ずかしそうにしながら帽子を深く被り顔を隠す。その仕草もまた可愛いと思ってしまう。


「で、何時になったら貴女は元に戻るんですか?」

「もうすぐさ。もうすぐ取り戻すさ…だからもう少しの辛抱さ」


その声は何処か楽しそうに、だけど何処か哀しそうにぽつりと呟く。彼女はやはりそれでも笑っていた。

「さて、そろそろ私は行くとするよ。私も色々と観たいし君も忙しそうだしね」


そう言うとふらりと消えてしまった。







次に彼女が現れた場所はまたしても懐かしい人物の前であった。どうして懐かしい人物に会うのだろうと苦笑いしながら彼を見る。

相手の表情を伺いながら彼女はクスクスと笑う。


「どうして貴様がいる、快楽の魔女よ」

「あら、私がここにいるのがよっぽど珍しいのかね、六英雄と言われたハクメン、別に私の意志でここに居るわけではないのでね」


ハクメンと言われた彼の表情は彼女にも解らずクスリと哀しそうに微笑む。

仮面の向こう側なんて解らない、いや、解りたくもないから解らないふりをしているのだ。


「で、また無意味に抗ってるんだね。それが意味をなさない事なんて解ってるんだろうハクメン?」

「貴様…その声で…その顔で私の名を呼ぶな……!」

「何で…何でそんな事言うのハクメン…ハクメンもまた俺≠裏切るの?また俺℃ななきゃいけないの…っ!」

「これ以上彼女のふりをするのを止めろ…ヒスカ=センヅキ…!!」


刃が彼女の貫く。否、彼女の透けた体を貫きすり抜けた。そしてハクメンに近づき仮面にそっと触れる。

近づくと彼女は悲しそうにそして何処か儚い顔をしながら微笑む。


「もうすでにあの子は昔のあの子≠カゃないのよ。いい加減忘れなよ、じゃないと君が辛いだけだよ。ふふっそれはそれで私は楽しいけどね」

「貴様…やはり性格が歪んでいるな。私だって解っている」

「未練がある奴は嫌いではないけどね、あの子に手を出すなら私も容赦しないって覚えておくように。あはははっ」


甲高い笑いをしながら彼から離れる。離れるとハクメンは彼女に背を向ける。

彼女もハクメンの周りをフラフラと泳ぐように浮かんでいる。


「またね君が無意味に抗ってる所を笑って観ることにするよ」




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