07
時は流れ、季節は巡り、それは無限の輪になって強き想いは永遠という時を創りだす。
多くの人の死を見た
多くの人の生を見た。
多くの人の思いを、
苦しみを
喜びを
悲しみを
祈りを
憎悪を
怒りを
懺悔を
紅い猫は見てきた。
けれど、もう、それは終り。
ふわり、ふわり
ピンク色の花びらが空に舞う。
その中で、茶色の髪がなびく。
「弥月、何をしている。」
そんな彼女に掛けられるのは、銀色の髪をもつ青年-三成-の声。
翡翠色の瞳が緩やかに細められて、そのまま彼女−弥月−を映している。
声に振り返った弥月はクスリッと笑った。
『なんですか?』
「秀吉様と半兵衛様の元に行くぞ。」
『ふふ、了解です』
首を傾げた弥月に三成はそう言った。
それに、小さく笑って、花びらの舞う山道を下って行く
ここは、かの武将が捨て猫を拾ったとされる場所。
多くの木が植えられて、「あの頃」は何もなかった場所が美しい自然へと変えられていた。
小走りで三成の横まで行くと、そのまま隣に立った
ちりんっ『?』
「どうかしたか?」
『今、鈴の音が・・』
そんな彼女の耳に届いた小さな音
風にまぎれるように鳴った音は、どうやら三成には聞こえなかったようだが、弥月はフッと視線を緩めて小さく首を振った。
『なんでもない、
ほら、早くしないと家康に先越されちゃうよ!』
「なに!?
急ぐぞ弥月」
それから、そう三成に言うと三成は血相を変えて走り出す。
それに苦笑いして、一人、弥月はくるりっと、後ろを向いた。
『ありがとう。』
また、会えるといいね。
にこりと笑って、前を向けば、少し離れたところに見える銀色で、
それに、一瞬驚きながらも、駆け出した。
想イ輪廻
巡る廻る
強き想いは廻って輪となり、そして、また・・・
「強き想いは廻る・・・か。」
『え・・・』
「確かにな、お前の言うとおりだった」
手を差し伸べられる。
その手に弥月は驚いたが、柔らかくならんでその手を取った。
400年を越えて、そして、きっと此の未来(さき)も・・・
20130514
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