06
ガキンっと、酷い音がした。
けれど、なぜかあまり痛みが無い。
左手にかかるのは、刀からの圧力だけ。
それは・・・
『っ刑部さん・・・』
刑部さんの、水晶の欠片が三成さんの刀を防いでくれていた。
といっても、ただの水晶、
ずっと、止まるとは思わないけれど、剣圧で少し頬が切れて、血が流れる。
「刑部・・・だと・・・」
『っ刑部さんが、私にくれたもの
あの時、あの時助けてくれたのも刑部さんだった!』
「っ」
『でも、それは全部三成を救うためなんだっ
三成を、これ以上苦しませないために、刑部さんが最後の思いをたくしてくれたっ私はそれに答えたいんだっ!!』
どんなに痛くても、どんなに怖くても、
たった一人の願いが私をこの世界に連れてきてくれて、その願いが救いたいという思いになって、その思いは想いにかわって私がここにいる存在意義になる、
「弥月・・・」
『帰ろう、こんなことしたって仕方ないんだから、
政宗も、真田も佐助や小十郎さんも
それに、これからの日ノ本に西軍の総大将だったアナタは、居なくてはいけない存在で、私だって、アナタに居て欲しくて・・
だから、一緒に家康が望んだ日ノ本を、ううん、三成さんにしか作れない家康が作ろうとした泰平の世を作ろう?」
吐き出した言葉に、泣きそうになる。
もともと、戦う力のなかった私に剣を教えてくれたのは三成さんで、最初に助けてくれたのも三成さんだった。
へらりっと、笑って、それから言った言葉に、カランっと、三成さんの手から刀が落ちて、パリンッと手首につけていた水晶も役目を失ったかのように砕け散る、
「・・・秀吉様は・・・私が生きることを許可してくださるだろうか・・・」
『勿論だよ』
「半兵衛様は、私が治める日ノ本を認めてくださるだろうかっ」
家康を討った時のように、崩れ落ちてポタリ、ポタリッと、血の涙を流す。
ずっと今まで独りだった。
私が消えてからも、ずっと独り。
ぽろっと涙が流れる。
涙は、血では無いけれど・・・
でも滅多に泣かないのに、あーぁ、三成さんの前だと大分涙腺がゆるいんだ
『泣くのは、全部終わって日ノ本が本当に泰平の世になってからにしましょうよ。』
「それは、貴様もだ。」
『っはは、ですね・・・』
*-*光に手を*-*
《帰りましょう、此処からなら奥州が近いですし、》
(・・・)
《落ち着いたら上田に行ってお花見でもしましょうか。》
小さな希望の光が猫を照らして、
咎人を光へと導きました。
執筆日 20130430
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