07
その言葉に、ぽたりっと私の頬に冷たい液体が滑り落ちた。
私から流れたものではない。
空が、流した涙。
三成さんの瞳から、つぅっと血の涙が流れる。
空虚に溺れて、どこを目指していいか、何を信じていいか、分からない。
そんな瞳に、胸が苦しくなる。
「毛利元就だ・・・あいつが・・・あいつが・・・刑部を・・・」
『・・・も、うり・・・元就公が・・・?』
私の知っている史実は、消えた。
それは、いいんだ。
別に・・・だって、これから少しずつでも家康がやることを三成さんがやればいい。
でも・・・神さまはどれだけ残酷なんだろう・・・
三成さんから・・・大切な主を奪い、尊敬する軍師を奪い、ともにあった友を殺し、対になっている光を・・・殺させた・・・。
どれだけ、この人に闇を背負わせる気なのだろう・・・
私には、何も、できないのに・・・
「私には・・・何一つ、もう、のこっていない・・・」
『・・・っ』
「弥月・・・貴様も私を裏切るか・・・』
なのに、どんどん彼は自分を信じられなくなって、壊れていって、狂って行く。
だけど私は・・・
*-*-*-*関ヶ原之戦*-*-*-*
狂って行く凶王
そんな凶王に寄り添うのは白い毛を殺してきたものの血で紅く染め上げた拾われた猫。
失ったものは二度と取り戻せない。
命を大切に思う猫はソレを知っている
死で分かつことを「裏切り」というのであれば
『私は、貴方の許可なしに、逝きません。』
猫の答えは、決まっていた。
執筆日 20130410
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