数年ぶりに訪れたこの屋敷。

だが、泣きそうだ。嬉しくて・・・ではなく・・・悲しくて・・・。手土産は、父親の遺体だ・・・なんて・・・。馬鹿げてるだろう。もう、その人は物言わぬ骸・・・。

きっと・・・義姫さまは私を罵倒するだろう。
父親を手にかけた・・・慈悲も無き・・・・化け物と・・・。


『・・・。』


そう思うと体がこわばる。
輝宗様のように・・・きっと和解は出来ないだろう・・・。



「政宗様・・・」
『大丈夫・・・だいじょうぶだ・・・No plogrem・・・』
「・・・・。」


小十郎から声をかけられて、小さく返した。
嘘、嘘だ。

大丈夫なわけがない。今にも心臓が潰されそうだ。
それぐらい・・・苦しい。


『小十郎・・情け無いが・・・そばにいて・・・。』
「貴女さまの命ならば・・・。」
『Sorry・・・いや・・ありがとう、小十郎』


こんな情け無い姿を晒すなんて、情け無い。でも・・・仕方ない

まだ・・・私だって16歳なんだ。一人でいるには、酷く心ぼそくて、何よりも不安だった。
小十郎と二人で静かな屋敷の中を歩く。

さめざめと輝宗様の死をいとみ・・・涙を流す兵士達に何も・・・いえなかった。


輝宗様の死を・・・義姫様も知っているだろう。私は・・・また・・また・・・・っ


『っ・・』


あの方に拒絶される?
どうしたら・・・いいの・・・





*-*Side Kojyuro*-*


景綱・・・お前に頼みがある。


今から、すでに約10年前のことだ。当時16だった俺は主である輝宗様に呼ばれ向かった先で言われた事。

小姓である俺に頼まれごと・・・そうおもうと酷く恐縮した、だが、いわれたのは、些細なこと。


「俺に、娘がいることは知ってるだろう」


その子を、守ってやって欲しい

それはまだ梵様の右目があったころ・・・義姫様の鬼事に巻き込まれた。

だが、昔からあの方は少々落ち着いていられた。しかし・・・右目を失い、そして全てを否定した。

それを外から狙うやからも少なくなく・・・。すぐに輝宗様の言ったことの意味が分かった、

他国の忍。国主としてもっとも確率の高い彼女を狙うのは、まっとうな意見だ。
姉上と一緒に政宗様の朝餉や夕餉を作っているうちにかなり達者になったが。


「景綱、右目を失ってしまったあの子を、どうか支えてやってくれ」
「勿論です。」
「ありがとう、すまないな。今は小次郎を跡継ぎにと考えているやつらにとって酷く政宗は邪魔な存在になる。あの子を守ってやってくれ。」



そして、改めてあの方に会った。初めてあったときよりも大分女らしくなり、だが口調は大分荒くなった・・政宗様に。
いろいろあったが、丈夫に成長なされ、初陣も済ませたあの方は力を纏い、輝宗様の力になるだろう、そしてこれからの奥州を守っていくのだろう

そう思っていた矢先だ。やっと、政宗様と輝宗様が仲直りをして・・・元に戻ったというのに・・・


『いい、「私」がやる。』


初陣でも誰一人として命を奪わなかったあの方が・・・初めて殺したのが・・・


『いや・・・これから私は父上を越える。なのに、俺が・・・父上一人支えられなくて、どうするんだ』


己の、父だった。なんて、皮肉にも程がある。たった16歳の女・・いや、少女が、親の愛も知らず、命を奪った。


「(輝宗様・・・俺は・・・)」


貴方様が俺をこの方に仕えさせてくれたことを・・・嬉しく思います。ですから・・・どうぞ・・・

今までの分も・・・ゆっくりと心をお安め下さい。



執筆日 20130612



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