『そういえばもう10年になるんだな』
「え?」


ズズッと茶をすすれば温かいが少し渋い味が口の中に広がった。なぜ、こんな話をしたかと思えば私が丁度16になったから。

今から、丁度ではないが10年前に私と成実…いや…当時は時宗丸に会ったのだ。思い出してクスクスと笑ってしまう。

当時の私は片目を無くしたばかりで周りへのあたりも強かったし暗かった。鬼の子…なんて呼ばれていたからな。
なのに私の元に来たのは…まだ小さな時宗丸であり、私を見て近づいてきた唯一の存在だった


 
「ね、ねぇ…」


一人ぼっちで庭にいたときかけられた声。呼びかけに振り返れば、目をまん丸にした時がいた。


「お、俺は時宗丸っていうんだ!」


それから、私に精一杯言った。正直言うと何故私に絡んでくるのかといういらだちのほうが強かったからそうとう冷たい目で見ていたと思うが、しっかりと私の目に時宗丸は映っていた。


「ね、ねぇ! 俺と友達になってよ!」


何が嬉しかったのか、時は満面の笑みで言った。
差し出された手に酷く戸惑って、でも、重ねた手は…とても暖かかったのを覚えている。それが私の人生の中でこれだけ長いつながりになるかとは、思わなかったが




「梵…っ」
『ぅわ・・』
「っ覚えててくれたんだね! 俺嬉しいよ!!」
『ちょ、成実?』


だが、ただ10年前にそういうことがあったな、みたいなことを言っただけなのにもかかわらず、すごいテンションの上がりかたなのだが…まぁ、いいか…


「俺さ、梵にとってただの家臣かと思ってた」
『はぁ?』
「だ、だってさ・・・」
『馬鹿だろ。』


腰辺りに抱きついている成実の頭を撫でる。

私の言葉に複雑そうな顔をしているが、くくっと笑って私の代わりにでもなったつもりか、少し長い髪を撫でる


『お前は俺のさ、唯一無人の従兄弟だろ?』
「っ梵!」
『だからさ、今度一緒に鷹狩にでも行こうぜ?お前、結構前から行きたいって言ってただろ?』
「梵大好き!」
『あぁ、知ってる。』



竜のつかのま


だから、彼女は知らなかった



執筆日 20130604




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