っていうよりもあまりおおげさにしたくない。形だけだ。諱を賜る。それだけでいい。
その名を送ってくれたのは輝宗様だった。
伊達、政宗。それが俺の、忌み名だ。
「政宗様。」
『・・・こ、じゅうろう・・か・・・』
「新鮮ですね、貴女様の名前は。」
今まで、部屋ではたまに女物を着ていたがもういいやとそう思った。でも、小十郎に名を呼ばれてまだすぐに反応できなかった。別に、梵天丸のままでも良かったけど。だけど・・・
『伊達、藤次郎政宗・・・か・・・』
これが本当ならば、私は奥州筆頭・・・伊達政宗になってしまった・・・ということだ。彼のような偉大な人間になれるかどうかなんて、分からない。だけど・・・
『なぁ、小十郎・・・本当についてきてくれるのか?』
「はい?」
『だから・・・お前、子供まだいねぇだろ?』
小十郎には小十郎の人生があるのに・・・なのに、私が縛り付けてしまったら・・・小十郎の家だって困るだろう。小十郎は、「男」だから。
「・・・あぁ・・・そのことですか。」
『そのことって、そんな軽い話じゃ』
「俺はまだいいですよ。夢が叶ったらそれで。俺は貴女の右目ですから。貴女様の夢を共に見る責任があります。」
言われた言葉に、目を見開く。
小十郎を見れば柔らかな表情で私を見ていた。
あぁ、本当、こういうところこいつはずるくてずるくて仕方ない。
それでもありがとうと思うのは、きっと心から俺が小十郎を信頼しているからに違いないだろう。
「ただ、貴女様は出来れば姿を伏せておいたほうがいい。何かあったときに困りますゆえ。」
『・・小十郎・・・』
「俺がそばで、貴女様をお守りします。」
双竜の誓い
執筆日 20130418