あの日から、数日がたった。
小十郎に私が負わせた傷は思ったよりも酷く、傷跡が残ってしまうらしい。怖い顔がさらに怖くなってしまうが、彼は気にしないといって私の頭を撫でた。
本当に、馬鹿なやつだと思う。

やっと精神面的に落ち着いてきて、小十郎を初めて私の部屋に招き入れる。最初は驚いていたが、素直に従って部屋にはいってきた。

私の部屋は彼から見れば散らかっている方だろう。
出ていこうとは思っていたが、証拠隠滅、惑わせるために散らかしていた本。それを再度読み直していたからこそ、そのままだ。

部屋に入ってきた小十郎に羽を羽ばたかせて天珠が肩に止まる。私よりも先に仲良くなるなんて生意気だと思うのだが、頬に走る傷をみて、心より、右目が痛んだのは、なぜかわからない。


『小十郎。』
「…ぇ?」
『悪かったな。』


私の罪を咎めるかのように、痛む右目が悪化していないのを頼みたい。それよりも、謝りたかった。そっぽを向きながら、片小十郎の名を呼んで、そういえば、驚いたような声がきこえた。そんな驚くことでも無いと思うけれど・・。

ちらっと小十郎を見れば、ぽかんっとしている。鳩が豆鉄砲を食ったようとはこのことかと考えるのは、間違いじゃない。


『なんだよ・・・』
「・・・俺に謝ることはありません。俺が、護れなかったのがいけなかったのですから。」


思わず悪態をつけば、彼は深々と頭を下げた。そんなこと、する必要なんて無いのに、ずるい。


『・・・なぁ、小十郎。』
「なんでしょう。」
『あの力について、教えてくれないか?』


でも、私に力がある。だったら、その力を使わない手は無い。
まず、奥州を統一して・・・私のような目に合うものを減らさないといけないのだから。


「貴方があの時起こした力は、婆娑羅(バサラ)といい、そしてそれを扱う者たちを婆娑羅者と呼びます。」



婆娑羅者。

それが私や、小十郎に当てはまるらしい。
そして力は雷・炎・氷・光・闇・風の6種類あって私の属性は、雷。
元々伊達家は雷の婆娑羅者に恵まれているらしい。

輝宗様も・・・雷。

けれど、小さな親子のつながりを、私は手に入れることが出来た。戦にしか役に立たない・・・血塗れた力だが、この力をもったということは、少なからずまた命が狙われるんだろう。



『ねぇ、小十郎。』
「なんでしょう。」
『小十郎は、何で私のそばにいてくれるの?』


だけど、小十郎だって武士だ。
なんで傷つけた私なんかのそばに居てくれるかなんてわからない。


「俺が、貴方さまのそばに居たいだけです、 そばに居て、貴方さまに二度とあのような思いをさせたくない。」
『私は、女なのに?』
「女も男も関係有りません、俺は・・・」
『っStop、もういい。』


むずがゆい言葉を並べられて、苦笑いをしてしまった。しかたない、私はこんなにも良い人に恵まれてしまったんだ。

やさしくて、ちょっとこわい。兄のような人・・・兄上って呼んだら怒られるだろうか、でも・・・


『ねぇ、戦にたつ女は居るの?』
「梵天丸様?」


でも、小十郎に護ってもらったこの命を、小十郎のそばで活用させたい、なんて、わがままなはなしだろう。私の心のうちに潜めておけば良い。


『いる?いない?』
「確か・・・立花の嫁や、前田家が・・・」
『Ok、居るんだな。』


だけど、その言葉が私に覚悟を決めさせる。私の言葉に不思議そうに私を見た。にやり、と笑ってやる。


『小十郎、私の右目を、お前に預ける。』
「梵天丸様!?」
『私は「私」を捨てる。元服して「俺」になったら、俺の右目になって、俺の背を護れ。』


するりっと包帯を外して、瞼の閉じることの無い、むき出しの右目を曝す。
その目で小十郎を見れば、ひどく驚いていたが、すぐに目を伏せる。


『ずっと、ずっとだ。命尽きるまで、俺のそばに居て、俺の隣に立っててくれ。』


初めて、この時代に来てこんなに執着した。そばに居て、ほしいって思えた。


『だから、俺の右目はお前だから、この右目は、いらない。』



*-*双龍の誕生*-*



医者を呼んで、座ったままの「私」
閉じられない右目は無視して、左目を閉じた。



私は、私を捨てた。




竜が地にから飛び立つため



執筆日 20130407



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