01


神様はじめました×夏目友人帳
例のごとく夏目が女の子。
途中まで考えていた没ネタ。
続かない


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小さなころからときどき変なものをみてきた妖と呼ばれるそれらは、私たちとは異なるもの。

昔はたくさん大変なことがあったが、今では多少自分でも対処できるようになってきた。

籐子さんや茂さん。田沼やたきたち

たくさんの友達ができた。人とも妖ともそれは関係ない。私は、私の時間を、絆を大切にできるようになってきたのだ。

それはとても嬉しいことだった。いろいろなものを、きれいなものも汚いものも見てきた私にとって宝物のような、そんな日々だった。家族がいて、友人がいて、一緒に悪さする悪友もいて…満ち足りていた。

私にはもったいないくらい…
そんな生活が嫌になったわけじゃない。
でも…


『お願いがあるんです。』


高校三年生。受験をした私が選んだのは、三年間幸せな思い出をくれたその土地ではなく…

どうしてか、ずっと引っかかっていたことがあったんだ。ずっとずっと小さいころの…
それこそ、父さんや母さんが生きていたころ…
たった一度だけあったことがあるその人が…今どうしているのか…それだけがただ気になって…。

私が選んだのは決別だった。


ヒラリ、ヒラリ、蝶が舞う、



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『え、取り壊し…。』
「そうなのよ、急に決まったことでねぇ…。」


「ごめんね、夏目ちゃん」と、目の前の大家さんが申し訳なさそうに笑う。最近の土地開発で突然そういうことになったらしいが、それは仕方がないことだと思う。むしろ、早めに言ってくれたおかげで二か月の猶予があるというものだ。にこりと、微笑んで『大丈夫です。』と言って見せたが心の中では冷や汗だらだらだ。
ぺこりと頭を下げてから大家さんと別れてからまた歩きだす。
だんだんと肌寒くなってくるこの時期に家がないのは正直つらい。

籐子さんたちに連絡を入れれば心配されてしまうだろうし、できればあまり心配はかけたくないのだ。

大切なひとだから。



「なんだ夏目。腹でも壊したか」
『にゃんこ先生…』



鍵を開けて、中に入れば玄関にさも当たり前にいる招き猫の姿に口元がひきつる。
つるー、もふーっとした姿は滝が寵愛していたあの時のままだが…いや、前よりだいぶ丸くなったか…。

っというよりも先生さえいなければペット可のマンションを探す手間も省けるのだ。にゃんこ先生だけ送り返してやろうか。
いや、にゃんこ先生なら自力で戻ってくるだろう。金の無駄だ。

なんて思ってまたため息をこぼす。


『なぁ、にゃんこ先生。先生だけでも戻っていいんだぞ。』


そのため息ついでに愚痴をこぼす。
靴を脱ぎ、フローリングの床を歩いていけば、寝に帰るには十分なスペースが広がっていて、鞄を投げ捨ててベットにダイブする。
勉強。バイト。
毎日いっては帰り、行っては帰り。慣れてきたとはいえ、精神的にはだいぶつらいものがある。


「なんだと貴様!この用心棒がいるのにまだそういうこと言うのか!」
『先生が一緒に暮らせるマンション探すの大変なんだぞー、高いし。』


とりあえずでも、明日バイトに行きながら考えるしかない。
だが、夜にやっている不動産なんてあるだろうか…。


「だぁかぁらぁ引っ越しなぞ反対したのだ!結局お前はもやしのままではないか!!」


じたばたと人の頭の上で暴れまわる先生にはいらいらしてくる。私の人生だ。私がどう生きようと長く生きている先生にはあまり関係のない話だろう。妖からみたら、人の一生なんてほんの些細なことだ。


『先生、とりあえず黙ってくれ。』


ぐいっとつるふわ先生を抱きしめる。
もふっと、最近のモフモフしている毛は私の睡眠を呼び寄せるにはちょうどいいもの。
視界を闇に閉ざせばだんだんと意識すらも落ちてくる。

ふわり、ふわり、


まだ始まれない。まだ戻れない。
私は返さなくちゃいけないんだ。




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