▼ 貴女がいた日常
「ねぇ、どうして止めなかったの?」
あの戦から幾月。だんだんと温かくなってきた今日この頃。
氷の忍が墓の前。夕日色の忍は側にいる、その忍の腹心へとそういった。
一つためいきをついたその忍はただ一言「あいつの遺言だ」と告げると身をひるがえす。
忍が去った後、ふぅっと息を吐いた夕日色の忍びは、手に持っていた桜の枝をそっと墓の前に添えて、立ち上がる。
脳裏に思いだされるのは、あの最後の光景だ。
「ねぇ、朱音さん、あなたの存在って、やっぱおっきかったんだよ…」
語りだすのは一つの思い出
「幸村様、性格が変わちゃった見たいっていうかさ…あんまり笑わなくなったし…鍛錬はするけど部屋に引きこもるようになちゃったんだ、お館様もやっぱり朱音さんがいるのが当たり前みたいでいつも癖で呼んじゃうし…才蔵さんや、十勇士のみんなもね、きょろきょろしてるんだよ。俺様も…さみしーんだ」
ぽろりと、一粒のしずくがほほを流れ落ちた。
「でもね。ねぇ、朱音さん、」
貴女のいた日常を俺たちは絶対に忘れないよ。
温かい風が吹く。
それは夕日色を揺らしぐいっと涙をぬぐって、忍は一羽の烏をつれ、その場を去った
『また、この夢…か…』
身体を起こした一人の女。
髪は鎖骨ほどまで伸び、濃い緑色。
そのままベットから降りるとカレンダーを見て、ふっと苦笑いした
『今日は、私の命日か』
くすくす、くすくす。
笑う、笑う
物語はまだ終わらない。
身体を起こした一人の女。
髪は鎖骨ほどまで伸び、濃い緑色。
そのままベットから降りるとカレンダーを見て、ふっと苦笑いした
『今日は、私の命日か』
くすくす、くすくす。
笑う、笑う
物語はまだ終わらない。
執筆日 20131103
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