▼ つなげなかった手
「いいのか?」
『もちろん。』
お館様にお会いして真田の父上にも再開して…
薄々は、真田の父上とともに弁丸に…幸村に会うとは予想していたけれど…
私を見た瞬間、悲しげに表情を崩しそして走って行ってしまった。
それには…やっぱり少し辛いものがあったけれど。
小さくつぶやくように「姉上」と呼ばれてひどく…心の臓がつぶされるような錯覚さえ感じた。
でも…もう私は止まれない。
『鎌ノ助。
今まで本当にありがとう。』
くすくすと笑いながら…口から自然に出た言葉を紡ぐ。
そうすれば「縁起が悪い」と怒られてしまったが、でも、本当にそうなの。
『でも、何も言わずに見送って、
最期だから…好きにさせてね。』
あの子の勇士を目に焼き付けておきたい。
あの子に命の大切さを知ってほしい。
最期まで、あの子の姉でありたい。
「隠居すればいいものを…」
『私、そこまで生きたいっていう願望はないし、忍は戦で死ねれば本望よ』
「自分が消えた後を少しは考えてみろ」
『あら?今日は優しいわね』
鎌ノ助はちゃんとみんなを守るのよ?なんてまた笑って軍へと戻るために足を動かし始めた。
空はひどく澄み渡っていて、
『(あぁ、空が…)』
伸ばせば届きそうなほど…空が近い…
執筆日 20131103
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