ヒラヒラと桜が舞う、
兜を脱いで丘になっているそこに座り込み下でおおはしゃぎしている皆を見て、笑っていた。

かれこれ、日は傾き・・・暗い中で桜を見上げればさっそく夜桜鑑賞・・・と言いたいところだが、
下の奴等は大分酒が回っているらしくドンチャン騒ぎとはまさにこのことだ

っていうか服を脱ぐな、おい、

なんて、考えていれば私に近づいてくる一人。



『越後の軍神とも甲斐の虎ともやれずじまい・・・すっかりアテが外れた。』



だから、嫌味のようにそう言ってやれば、ストンっと私の横へと座る。
いつもの定位置だ。



「申されようの割りに、あまり残念そうにはお見受けいたしません」

『だったら、なんで止めたんだよ。  こじゅ』



視線は感じるがただ、まっすぐ・・・まっすぐ前を見たままそう言葉を紡ぐ。
少し、嫌だった。

小十郎だったら、あの忍を止めてくれると思ったのにだ



『私があいつに負けるとでも?』

「・・・いえ。 武田の忍を名乗るものの申したことが真であった場合を危損したまで」



そこまで言われて、ゆるりっと視線を向ければ視線を向ければ小十郎はやわらかく微笑んだ。
私の好きな顔だ。

それから私の手元の器を見て、酒を注いだ。



「いずれにせよ、あのまま戦り続けていればどちらか、あるいは双方が」



でも、最後まで言わず、そしてその表情は少々怖い
まぁ、私が無茶したのは重々承知だ。

小十郎がついでくれた酒を一口飲んで、息を吐いた。
さすが、と良いたいが小十郎は比較的度の弱いものを持ってきてくれたようだ。



『ちょっと暴れすぎたみたいだわ。
 クールに行かないとね』



それを言った後に、もう一口。
最近は忙しくてなかなか花見なんて出来やしなかったからな

少しぐらいは、と思うが・・・

小十郎が向ける視線は兜の傷。
後少しでもずれていたら、確かに怪我はしてただろう。
過ぎたことだけどな



「奥州へは、明日たちますか」

『いや、物見遊山のために武蔵国へ流れてきたわけじゃない。』

「では、先んじて放った斥候が戻り次第軍議を、」



なんて、考えていれば、小十郎にそういわれた。
首を振りつつそういえば、まるでわかっていたかのようにそういわれる。



「周辺諸国からの重圧に耐えかねた今川が、たまらず兵を挙げる頃合いかと」



それから、そういわれた。
あぁ、やっぱり私の右目は賢い。



『・・わかってるようだな』

「しかし武田が逸早く、その足元を掬わんとするものと踏んでもおります。

 川中島で両軍は刃を交えてはおりますまい。
 我々の奇襲を知った時点で、双方の大将は日を改めようと決めたはず」



それから、言われた言葉に少々むっとした。
だってそうだろう、

まぁ、私が先走ったこともあるが・・・

なんてふと視線を小十郎の手元へ向ければ私へと酒を注いだにもかかわらず自分は進んでいないようだ。

当たり前だろ



『こじゅ、別に私にあわせて持ってこなくて良い
 ほら、』

「政宗様。」

『私には度が強すぎんだよ。
 あの狐の酒はうまいが、なにぶん度が強いんで私はのめない』



お前は好きだろ、

なんて続ければ、苦笑いされて「頂戴します」とこちらへとよこした。
ふわり、と風がふいて髪を揺らす。

桜の花びらが舞い、ふわりと私の竹筒の中に舞い落ちた。



「甲斐の虎を出し抜いて今川を落とすのも、一興かと」



それを軽く揺らしながら、小十郎の提案を聞けば、くすりっと微笑んだ。



『・・どんな手を使う』

「ほかならぬ、武田を模倣いたします
 名づけるとするならば・・・



 啄木鳥の戦法」



小十郎は、本当に面白いことばかり思いつく。
くくっとわらって、



『面白そうなゲームだ、 乗った、小十郎。


 そうと決まったら、明朝、出発だ』



そう言ってから酒を煽った。










『ときぃ・・・っ』

「ちょっとぉお!?
 え、ねぇ何がどうなってんのぉおお!?」

「・・・すまねぇ、ちょっとした手違いだ。」

「えぇええぇぇええ!?」



執筆日 20130817

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