*-*Side Yukimura*-*



崩れた政宗殿を見たとき、心の臓が止まるかと思った。
抱きとめた体は六の刀を振るうにしては、やわらかく、けれども、蒼い衣が紅という己の色に染まっていく様は、心地よく、恐ろしかった。


だが、不思議と、「政宗殿」が女子であることに嫌とは思わなかった


…いや、不謹慎か…
政宗殿は苦しんでおられ、そして右目といわれるこの人は心中荒れている。



「真田の旦那。」



そんな時だ
西の不穏な空気を探りにいたであろう佐助の声。

振り返れば佐助と…手負いの…



「文七郎・・・っ」



伊達の兵で間違いないらしい。



「片倉…様…」

「おい、何があった。」



弱弱しく片倉殿の名を呼んだ
痛みにか、それ以外にか泣きそうに歪められている表情。


そして、語られた回想に多少の困惑が混じった。

これは、奇襲か…否か…



「俺様が駆けつけてきたときには、この兄さんが一人倒れてた。」




四人いた、なのに戻ってきたのは文七郎と申す、この男一人




「ほかの者たちは」

「連れ去られたらしい。
 こいつがその場に、」



そして差し出された書状をうけとり、開く。
そこに書かれていたのは…



「片倉殿…っ!」



我ら、武田だけではない。
おそらく、一番関係あるのは伊達。
だが政宗殿のこの状況であるならば、彼にと、手渡した。




「さらった者たちと引き換えに、武田の盾無鎧(たてなしのよろい)、政宗殿の六(りゅう)の刀をそろえて差し出せと申しておりまする!
 しかも、刻限は明朝…」

「…」



そして、伝えるのは、その言葉だ。
難しい顔をしたままの片倉殿は静かに「松永弾正久秀…」と名をつぶやいた。




「松永っていやぁ…戦国の梟雄といわれながら天下取りに名乗りを上げず、今は庵に籠って骨董品集めに精を出してるっていう…」

「真田、盾無鎧とはなんだ?」



話が進んでいく、
それから片倉殿が某に視線を向けた。




「武田の…家宝にござる…」




あぁ、だが…


どうしたら…よいのだろう




執筆日 20140128

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