何が、どうなった。
森の中が妙に騒がしくなって、それは私のところもだ


いきなり降ってきた銀色の長髪をもつ男。
両の手の大鎌を御輿へと突き刺し、中からは、今川の悲痛な叫び


動いているからか、振動からか、血が飛び散り道へと落ちて行く。



『っ誰だ・・・テメェ・・・』

「ク・・ククク・・・」



舌打ちと、睨み。
私とは裏腹に、顔に笑みを浮かべ、そして、喉を鳴らしている。



「これが本物だったとようですね・・・・戴いていきますよ」

『っナメたマネしやがって・・・っ』



「これが」ということは、他にも何人かいるということだろう。
そいつらと・・・ 小十郎たちが当たっているということか・・・ 

だが・・・これほど侮辱されたことは無い。

ぶわり、




『っ』



どこからともなく霧が現れる。

その霧の中に消えて行く御輿に酷く、心が焦った。

落馬しないようにと手綱代わりにしているそれに手をかけるが、遅い。



『ぅ、あ・・・』



きっと、怖かったのだろう。
暴れた疾風はそのまま前足をあげ、そして、地面へと転がる

無論、私も・・・


ズザザッと、泥の中へと落ちる
でも、すぐに身体を起こした。

軽く身体を打ちつけたが・・・大丈夫だ。



『っ疾風!!』



少し距離の離れたところに寝転がっている疾風に駆け寄った。
そうすれば、疾風は軽く首を振り、そして差し伸べた手に頭を擦り付ける。
 
大丈夫、とでも言いたいのか…
私と同じで、タフだと思う



『ごめん・・・少し・・休んでな・・・』



ただ、せっかく怪我が治ったというのに、また怪我をさせるのは嫌だ。
だから此処に残して行く。

数回頭を撫でて、身体を起こすのを手伝ってやり、近くの木に手綱を結んだ。
それから、頭に被っている兜をぬぎ紐を疾風に結んで、また撫でる。

そこからは、徒歩。
霧が残り、かなり視界は悪いが歩けないほどじゃない。



『・・・っ』



ゆっくりと森の中を歩く。
自分は転ばないように警戒して、ゆっくりゆっくり・・

森を抜けた。

でも、そこには崖
崖の上には大量の人

その中を、歩いた。



私はかなり場違いだろう。
でも、関係はない。


ただ、目の前に聳え立つ、断崖絶壁、
まがまがしく、どす黒いオーラのような黒い雲を背景に・・・

威圧的に見下ろす・・・男・・・

男の周りには、綺麗な女の人、子供・・・それから私の獲物をとった・・・あの男

無言の圧力とは・・それだ、

手を六爪にかけた、でも



『くそ・・』



雷鳴がとどろく。
まるで、地獄絵図の手前にいるかのようなそんな錯覚に陥る

あの男の目は・・・まるで・・・






魔王。




さっそく人の目ではない。



「政宗様・・・」



私の後に続いて小十郎が



「おぉ・・・!あれはまさしく、小田の軍勢」



そして、真田幸村と



「お、おい、旦那!!」



その忍、猿飛佐助。



「尾張の魔王こと、織田信長公とお見受けいたす!
 某、真田源二郎幸村

 甲斐の国は武田の家臣なり!」



唯一馬に乗っている真田
だが、真田はこの威圧感を感じていないのか・・・ 馬はおびえきっているというのに・・・



『っ・・・黙れ・・真田幸村』



声を発すれば、酷く自分の声ではないような感じがした
声のトーンが落ち、低い。

視線が集る。

でも、そんなので私の心が休まるわけが無い



「・・?」


『私を・・・っ射すくめやがった・・・っ!!』



小さく、叫ぶように、呟いた。
私の耳に届くか、届かないか、ソレぐらい小さな声で、叫んだ


けれど、それよりもどうしようもなく、感情が揺らぐ。

あの銀色の男の大鎌が持ち上げたのは・・私や小十郎、強いては真田が追っていた・・・今川義元・・・


いやだ・・やめろ・・
やめろ・・・っ!!



『っ!!!』



パァンっ!!!!


一つの、銃声、
そして転がり落ちてくる一つの、固まり。


腕や足はあらぬ方向に折れ曲がり、
討たれたその頭からは血が・・・



血が・・・血が・・・滴っている・・・



「第六、天魔王・・・」

『っ織田、信長・・・・ッ!』




口の中が乾いて・・・

酷く・・・




酷く・・・




自分が幼く見えた



執筆日 20130519

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