月明かりが、壊れた城を薄ぐらに照らし、
よくわからない…何かが灼けた後のにおいが充満する中に、黒衣の騎士は茫然と血にその身を染めて立ち尽くしてた。
…おそらく、世界は光を取り戻したのだろう…
けれど、一人世界に取り残された紅の姫君は、もう、戻らない。
銀の魔女が奪いしその場所は確かに、姫君に返されど…
それが…すべてを失う前だったら…
「クク…愉快愉快…」
地に伏せるは息絶え絶えな第五天魔王。
後ろでその様子を笑いながら見るのは銀を滅ぼした梟雄…
ゆるりと振り返りし黒衣の騎士の瞳には、何も映っていなかった
「さて…卿からは…
そうだね…
希望をもらおうか。」
パチンッ
指を鳴らせば表れたのは風の悪魔。
その腕にかかえられていたのは黒の忍。
ぼろぼろになりながらも、床に転がされた忍びは黒衣の騎士の名を呼んだが…
ゆっくりとした動作で振り上げられた刀。
それは新たな紅を生み…
執筆日 20130822