「ねぇ、才蔵。
知ってること洗いざらいはいてくれるかな?」
「…」
「俺様、仲間にこんなことしたくないんだけど、」
牢につないだ俺様の部下に、そういってまた刀を振り上げる。
だって仕方ない。
おそらく才蔵は、知っていたんだ。
お嬢の実家が…火事になってみんな死んだっていうこと。
なのにそれを主君である大将…長である俺様に言わない。
おそらく、才蔵はお嬢の居場所を知ってる。
最近真田十勇士に指示を出していなかったからだれがどこにいるかとか、あんまりわかんないけど
「では、ご自分の足で調べたらよいではありませんか。」
「…」
「俺は長につかえているのではありませぬ、
幸様につかえ、幸様のお心のままこの身を器とし霧となりかの方を隠し守ることが俺の役目。
もとより猿飛佐助…お前は己がどのような処遇を受けているか気が付いているのか?」
でも、言われた言葉にすぅっと体から熱が引いていく感じがした。
才蔵は何を知っていて…何を…
「あなた様が天女にご執心の間、幸様は俺にこういわれた。
「清海殿と、伊三殿に佐助達の監視を・・・才臓殿、しばらく鎌之介殿と協力をして忍隊を動かせ、」
今までずっとあなた様は監視されていた。
それにすら気が付かない。」
「…」
「かくいう俺も、残りを完璧にまとめることはできていない。
だが、
もう、幸様はあなたを頼ることは、ないだろうな。」
カラン
手から刀が滑り落ちて乾いた音を奏でる。
頼る、ことはない・・・
た よ る こ と は な い ?
「真田の屋敷から生き延びたのは幸様が母、ただおひとり
もし、本当にあの屋敷に幸様がかえられていたとしたら生存は確認されていません。
現在捜索はしていますが、
あなたはどうぞ、天女様の護衛にでもなんにでもまわったらどうですか?」
忘れかけていたその姿が目に浮かぶ。
炎の中、俺様の名を呼んだあの子は…
「幸…様…っ?」
あれは、正夢?
じゃぁ…
ずるりと、体が闇の中に沈んだ
執筆日 20130819