もしも、風の忍が奇襲をかけなければ…。
もしも、蒼き竜が紅の姫君を引き止めていたのならば…。
もしも、武の将が紅の姫君を己のそばに置いていたのならば、
もしも、橙の影が銀の魔女に会わなければ…
もしも、もしも、もしも、もしも、もしも…
もしも、銀の魔女が紅の姫君を堕とそうと考えなければ…
すべては「もしも」
もう戻れやしない過去を考えたって仕方のないことだけれど、
けれど考えるだけはいいだろう、
つながることのなかった太陽と満月との縁、切れることのなかった絆を思えば…
喪われたものと、新たに手に入れたもの
その代償は大きなものだったけれど…でも…
『もう、いい。』
わかり切った言葉。
歩みだしたらももう止まれない。
目の前には武の里。
喪ったはずの、彼女の居場所
もうすぐ、すべてが・・・・
執筆日 20140918