青空日和


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【番外編】お酒は大人の味 夢主side



ある島のBARでの事。私の所属する赤髪海賊団は、恒例の宴を開いていた。非常に賑やかで皆それぞれ好きに飲んで好きに騒いでいた。店主のお姉さんも次々と出る洗い物を片付けながらも笑って眺めていた。そんな中、私はというと酒には興味が無く寧ろ体に悪いと分かっている為、飲む気はさらさらなかった。だから今日もカウンターバーに向かって、しゅわしゅわと音を出す水色のソーダでも飲みながら時間を潰すのであった。


「ソラちゃーん!飲んでるか!?」

「飲まなきゃ損だぜ!」

「そうだそうだ!おれのでも飲むか!?」

「お前の飲みかけなんかソラちゃんに飲まそうとすんな!」


ぎゃーぎゃーと騒ぎながら私に声を掛けては軽い喧嘩に発展するこの酔っ払い達は、いつだって騒ぐ口実を探しているだけだ。呆れながらも、そこまでハイテンションになって騒げるのは楽しそうだなあと思っている自分が居たそうしていると、聞き慣れた声が聞こえてきた。


「お前ら、ソラが困ってんだろ!ほら!あっちで飲め!」


声のする方へ視線を向けると、そこにはべろべろに酔っ払って顔が赤くなったシャンクスーーー父が居た。船員達は素直にはーい!と返事したのち、また笑い合いながら飲み出した。父はそのまま私の隣の席へどかっと腰を下ろし、へらへらと笑いながら、酒をコップに注ぎ出す。こんなにも酔っ払っているのに、まだ飲むの?
つい顔を顰めるが、どうせ明日辛いのは本人だ。心配しても酒だけはやめた事がないし、好きなだけ飲ませておこう。


「どうだ、ソラ!楽しんでるか?」

「まあまあ」

「だはははっ!お前、酒飲まねェもんなァ!よし、おれが昔話をしてやる!」

「はいはい、お好きにどうぞ」

「あれはおれが18の頃ーーー」


別に頼んでないのに、と思いながらも父の昔の話、海賊の話は面白い事ばかりで聞くのは密かに楽しみになっていった。

盛っているのでは?と思う事は多々あるがこんな性格の父だ、あり得そうなんだよなぁと思いつつ、自然と視線は父の注いだ酒の方向へ行っていた。


「…飲んでみるか?」

「えっ、」

「ずっと見てるじゃねェか!ほら、今注いでやる」


先程までの騒がしい父とは一変し、カウンターに頬杖をつき、此方を優しい瞳で見詰めていた。なに、その目!何だかそれがムカつき奪うようにコップを口元へ持って行き、喉に流し込んだ。


「っ…まずい!!」

「っく、だはははっ!!まずいか!そうかそうか!!」


思わず出た言葉。私の反応が余程面白かったのか、大口を開け豪快に笑う父。口内は苦く、反射的に顰めた顔は戻りそうにないまま抗議を続けた。

「苦い!これのどこが美味しいの!?」

「ソラはまだまだ子供って事だな!」

「絶対関係無い!」

「だははは!!ったく、面白えなァ!流石、おれの娘だ!」

「もう!そこまで笑わなくて良いじゃん…!」


涙が出るほどに笑い続ける父に、顔に熱が集中するのを感じながらつい怒鳴る。理解できない。こんなお酒が美味しく感じるの?この場で酒を飲んでいる船員全員の舌を疑ってしまう程に、美味しくなかった。


「まァ…きっと、いつかは分かるさ」


父はやっと落ち着き、笑い疲れた様子で私の髪を崩すようにわしゃわしゃと撫で回した。此方を見つめるその瞳がまた優しくて、何とも言えない気持ちになる。いつか、この酒を美味しいと思える日が来るだろうか。父と一緒に飲むことが、出来るだろうか。そんな事を思いながら、口直し用に水色のソーダを喉に流し込んだ。


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