恋連鎖 | ナノ
「……」
「何してんだ総悟。そろそろ始んぞ」
「分かってまさァ土方さん」
―――畜生、何でここにいんだよ銀八の奴…
自分が連れてきた結の方を見れば、いつの間にか銀八の姿が。そして銀八と、嬉しそうに会話をしている結の姿が眼に映る。
実際総悟は、彼女が銀八に対して好意を持っている事を知っている。しかし二人が恋人同士になっている事はまだ知らない。
だから結が銀八に対してあんな嬉しそうな笑顔を見せている事にも少し嫉妬心を持った。
彼女が笑ってくれる事は嬉しい。けれど、その笑顔の先にあるのは自分でなく銀八という……。
ピ――――!!
「ちっ……」
試合開始のホイッスルが鳴れば、そのいら立ちを元に、思い切りボールを蹴るのだった。
「うわっ流石Z組…!」
ボールが高く跳ねあがる。そしてそのまま走り出す男子諸君は何とも爽快で機敏で無駄が無い。
結も「すごーいすごーい」と歓喜し、元々スポーツの試合を見る性分ではないが見入ってしまう。
「おし、これも勝ったな」
「今日はこれで三連勝ですね!」
そう会話している間に、もう総悟が一点決めた。
向かいの方の一般観覧席の方の3Zの女子たちもワーッと盛り上がる。
ついでに別のクラス、学年の女子達も盛り上がる。
突然の歓声に何事か!?と結は振り返った。
「……うちのクラスの男子達ってレベル高いですもんね」
「何?結も今のシュート見てかっこいいって思ったの、銀さんよりも素敵だって思ったの。ふーん…」
「ち、違います!銀ちゃんの方がかっこいいよ……」
段々と尻すぼみになっていく声を銀八はしっかり聞きとると、満足そうに笑顔を浮かべる。
「まぁ去年もあんなだったなーそういや」
「クラスって変わってないんですか?」
「Z組なんて特別枠、毎年変える必要なんざねーよ。ずっとこのメンツでZ組やってます」
「マジでか!」
「おう」
と、言う事は…あたしは何故この特別枠に入ったんだ?あれ、あたしなんか悪い事したっけ……?
「あれ、確か球技大会って、クラスごとで競い合うんでしたよね…」
「そうだよ」
「じゃあZ組はどうするんですか?まさか、3年だけってことは…」
「of course.俺らだけでーっす」
「えぇぇえええ!!?」
それって圧倒的不利じゃないですか!あと無駄に発音良くて吃驚!
しかし銀ちゃんは「まぁ、そこら辺はちゃんと配慮してあるから」と付け足せば、どこからか取りだしたイチゴ牛乳をチューッと飲んだ。
あれ、校内で勝手に飲食してもよろしいんでしょうか…?
「飲む?」
まぁ銀ちゃんが飲んでるんだったらいいのかな。
なんて考えて、あたしは銀ちゃんからいちご牛乳を貰うと同じようにチューッと飲んだ。
「……何ですか?」
その様子を銀ちゃんはニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべながら見ている。
何なのかと尋ねれば
「間接キス」
なんて無邪気な声で返ってくるものだから、あたしは一気に体温を上げてしまったのだった。